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とあるβテスター、奮闘する
裏通りの鍛冶師
とあるβテスター、手を握る
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ラインさん」
「おうよ!」
クラインの手を、握り返した。
好意を、受け取った。
彼を巻き込むことを、承知の上で。

「───うっし、フレンド登録も問題ナシだ」
「ありがとうございます」
「あー、それとな。敬語とかそういうお堅いのはなしにしようぜ。オレのことも呼び捨てでいいからよ」
「……、わかったよ、クライン」
「おう!よろしくな、ユの字!」
こうなってしまえば、完全に相手のペースだ。
僕が何としてでも近寄らせるまいとしていた距離を、クラインはあっという間に縮めてしまった。

まったく、もう……。
誰かと関わることなんて、極力避けようと決めていたはずなのに。

「──そんじゃ、オレたちはここに残るぜ。こないだ新しいスキルが出てよ、武器を新調するために鉱石が必要なんだ」
そう言って、クラインは通路の奥───既にリポップしたゾンビで一杯になった広間を見据えた。
どうやら、彼らの目的も僕たちと同じだったらしい。
偶然にも同じ物を同じタイミングで取りに来て、そのお陰で僕たちは命拾いしたというわけだ。
……本当に、感謝しないとね。

「前にアルゴが言ってた。カタナだっけ?」
「おう、ずっと曲刀使ってたらいつの間にかな。でもってカタナの入手方法は今んとこ、ここの奴が落とす鉱石から作るしかないんだと」
カタナスキル。
第十層迷宮区のモンスター『オロチ・エリートガード』が使用するスキルで、βテストの最終層が第十層までとなった原因ともいえるスキル。
そして、第一層のコボルド王が使ってたあれ。
そのせいでディアベルが死にかけたり、元βテスターが疑われたりと……僕にとっては少しばかり嫌な思い出のあるスキルだ。

……と、個人的な感情はさておいて。
アルゴの話によると、曲刀を使い続けることによってカタナスキルが出現することが最近になってわかったらしい。
所謂エクストラスキルと呼ばれるもので、それまで敵専用だと思われていたカタナスキルを、晴れてプレイヤー側も使用できるようになったというわけだ。
ちなみに、エクストラスキルの中でも全プレイヤーから一人しか習得できないスキル───ユニークスキルもあるのではないかという噂もあるものの、今現在においてそれを習得したというプレイヤーの情報はない。

とはいえ。現段階での入手方法がこれしかないというのは、なんとも難儀な話だ。
僕たち三人が死にかけたあのゾンビの大群を、彼らだけでもう一度相手にしなければならないということなのだから。

「……大丈夫なの?」
「ま、6人もいりゃ何とかなるだろ。そもそも、ここに三人で挑むのなんておめぇさん達くらいだぜ。普通なら入る前に怖気付くだろうし、いくらなんでも無謀ってもんだろうよ」
「う……」
耳が痛い。
図星なだけに言い返せない
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