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とあるβテスター、奮闘する
裏通りの鍛冶師
とあるβテスター、手を握る
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の作戦会議などといった場面で、どうやら知り合い同士だったのか、彼がキリトと話しているのを見たことはある。
だけど、そういった時。僕は決まって、遠くから眺めているに留めた。

途中参加の彼らは、きっと知らない。
第一層攻略の時、僕が何をしたのかを。

「ボス戦で投げナイフ使う奴なんて他にいねぇからよ、珍しくて記憶に残ってたんだよ」
「そう、ですか……」

───やっぱり、関わるべきじゃない。

この様子だとクラインは僕の名前はおろか、《投刃》の噂すら知らないのかもしれない。
だったら尚更、僕のような人間が親しくなるわけにはいかない。

キリトと話している時の様子や、こうして本人と直接対面してみて、クラインが人との間に壁を作るような人間じゃないということはわかった。
キリトやアスナ。エギルにディアベル、リーランド。
あの攻略戦に参加し、僕の行動を目の当たりにしても尚、友好的に接してくれる人たち。
攻略組全員を敵に回す覚悟だった僕は、そんな彼らに感謝してもしきれない。

きっと、クラインのような人は。
例え僕の素性を知ったとしても、こうして気さくに笑いかけてくれることだろう。
……でも、だからこそ。
彼らには、知らないままでいてほしい。

彼らの中には、僕のような元オレンジがいるわけでもない。
リリアのように、訳ありプレイヤー相手に商売していたわけでもない。
本当の本当に、僕のような人種とは縁のない人たちなんだ。

だから。
何も知らない彼らにまで、『殺人鬼と仲良くしている連中』というレッテルを張られるようなことになるのだけは、何としても避けなければならない。

「ところでおめぇさん、名前は何ていうんだ?」
「………」
どう、するべきか。
幸いなことに、彼らの加勢のお陰もあって、本来の目的だった鉱石は既に入手済みだ。
わざわざこの不人気ダンジョンに訪れた目的を達成した以上、もう僕たちがここに留まる理由はない。
命の恩人である彼らに不躾な態度をとらず、尚且つ必要以上に親しくならないように、この場を切り抜けるには───

「……ユノくん、名前聞かれてるよー?」
「──っ!?」
「また考えごとー?だめだよ、人と話してるときはちゃんと聞かなきゃ」

───シェイリ……?

正直に名前を名乗るべきかどうか考えていた僕の思考は、突然割り込んできたシェイリによって強制的に中断させられた。
思ってもみなかった彼女の行動に、僕は困惑してしまう。

「ごめんねー。ユノくん、たまにこういうことよくあるんだ」
「おいおい嬢ちゃん、それじゃ頻繁にあるのか時々なのかわかんねぇよ」
「あ、そっかー!」
「ははっ、面白れぇ嬢ちゃんだな!オレはクラインってんだ、よろしくな」
「よろしくね、クライン
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