第二幕その四
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第二幕その四
「それは。けれど今は違う」
「違うというのね」
「明るい昼の光の世界は元々私のものではなかった」
今それがわかったかのような言葉であった。
「そう。私は元々光の中にはいなかったのだ」
「光の中にはいなかった?貴方が」
「私の名はトリスタン」
その名にその意味があると言いたげだった。
「だからこそ。私には昼は」
「ないというのね」
「そう。光の中にはいなかったのだ」
「では私は貴方のものではなかったのね」
「気高き輝きを以って私の目の前にいる貴女を包んでいたもの」
イゾルデにまた告げる。
「名誉の栄光に誉れの力」
それこそが輝きだというのだ。
「私はそれにこだわり思い誤っていた。きらきらと輝く光で私を明るく照らしていたこの世の名誉の光は空しい歓喜の輝きに過ぎなかった」
「真ではなかったと」
「少なくとも私には」
ここでも光を拒んでしまった。
「私は心の奥底の清い夜に暗く閉ざされながらも目覚めつつ」
「それこそが」
「そう、知恵も瞑想もなくただおぼろげに感じられるもの。この目が恥じて見ようともしなかったもの」
彼はさらに言葉を続ける。
「それこそが私が求めているものだった」
「奴隷の様な虚栄の昼。貴方も私も騙したその日ルはなくなり偽りの優しさや欺きの輝かしさは私の本心を偽らさせていた。私はその光から逃れ偽りを終わらせた」
「私と同じように」
「そう、私と同じように」
またトリスタンに告げた。
「私の心が約束してくれた場所は」
「それは?」
「夜」
一言だった。
「そこでは偽りが描く嘘も妄想も消え去り永遠の愛こそがある」
「私に差し出されたあの黄金の杯こそがその船頭だった」
「あの杯こそが」
「快い死への誘いかと思い償いの美酒かとも思った」
「けれどそうではなく」
「この胸の中に崇高な力で夜が優しく黄昏てきた」
何処までも夜の闇を求める彼だった。
「そうして私の昼は終わった」
「あの美酒によって」
「あの美酒に祝福を」
夜に誘ったその美酒に対して。
「気高い魔力に感謝を。私はそれにより死の不思議な国を広々と見てそうして闇をも見通す目を得たのだから」
「けれど光は私達を怨み」
イゾルデもまた夜の世界の住人であった。
「常に私達を阻む」
「昼は恨めしいもの」
「そう、けれど」
「夜は」
二人の言葉がその夜の中に溶け合う。
「私達は夜に捧げられた者達だった」
「その夜の中で」
「そう。夜の中で」
イゾルデもトリスタンも言葉を続ける。
「企み深い昼、妬み深い昼は姦計で私達を引き裂いたが最早その偽りには騙されない」
トリスタンはあくまで夜を讃える。
「昼の虚栄の輝きも誇らかな光も夜によってその眼差しを清められた
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