第三十五話 厳島神社その十
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「この場合はね」
「だよな」
「それで因縁だけれど」
「清盛さんの残した因縁もあるんだな」
「そうなの、あるの」
「だから平家は滅んだんだな」
美優は里香の話を聞いてそれで納得した。
「そういうことだよな」
「そうよ、それでなのよ」
実際にだとだ、里香は答える、
「それで源氏もなの」
「身内同士で殺し合ってなんだな」
「そういうことなの」
里香はまた新しいものを見た、海の中に浮かんでいる鳥居だ。この神社の大鳥居である。
その赤い大鳥居を見てだ、そして言うのだ。
「平家は作品の中ではあらゆる神様に責められてそのご守護もなくして滅んだのよ」
「それでもこの神社だけは違ったからね」
景子はまた言った。
「厳島神社だけはね」
「じゃあこの神社の神様は優しいのかしら」
彩夏は先程も話したこのことを話したのだった。
「そうなのかしら」
「そう思うわ、この神社の神様はね」
「優しいのね」
「確かに平家に祀られていて色々貢がれていただろうけれど」
それでもだというのだ、平家の権勢から考えるとその貢ぎものもかなりのものであることは容易に想像がつくことだ。
「それでも厳島神社の神様だけは違ったから」
「平家を庇ったのね」
「全部の神様が平家に駄目出ししていたのよ」
神道のことだからだ、景子はこのことについては里香よりも詳しかった。
「それでもなのよ」
「皆が批判する中で」
「そう、一人だけはね」
「それって凄いわね」
「結局退けられたけれどね」
そうなったがだというのだ。
「平家を最後まで庇ったのよ」
「ううん、立派ね」
「そもそも平家は駄目でも」
「後は源氏よね」
「そう、頼朝さんよ」
彼になるというのだ、平家を駄目だとしても。
「それを考えるとね」
「厳島神社の神様は正しかったのかしら」
「そうかもね。結局源氏って血は絶えたから」
その後は都から将軍を迎えて実質は北条家が全権を握った、北条時政の思惑通りに進んだのであろうか。
「そうなったからね」
「ううん、どうなのよね」
「私はね」
景子もこう彩夏に話す。
「この神社前から来たかったし」
「それでなのね」
「そう、そのお話も知ってたから」
「この神社好きなのね」
「やっと来られたわ」
幸せそうな顔での言葉だった。
「ほっとしてる位よ」
「そこまでなの」
「平家をたった一人庇ったのよ」
またこのことを話す。
「そのことを考えたら」
「好きなのね、この神社が」
「また来たいわ」
こうまで言う、そうした話をして。
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