十一日目 十二月一日(木)前編
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」
(うぉ、せ、背中の柔らかいものは、も、もしかして)
「変態っ」
直後、見えない鉄拳が純一の腹を強打した。
「ぐぶはぁっ」
満足した森島はるかは、手を解いて、ふふっと笑った。
「びっくりしたっ?」
「せ、先輩、心臓に悪いです。別の理由で命も危ないです」
「何よ」
耳元で、セイバーの怒気を帯びた声が聞こえた。肝が、心底冷えた。
(は、ははっ。き、気をつけないとな)
純一の心情を知ってか知らずか、はるかが、可笑しそうにころころと笑う。女神の笑みは一面の花園のようで、見ている純一の心を温めた。
「それで先輩、今日はどうしたんですか?」
はるかが、ふふっと笑う。そして何やら凛々しいポーズを取って、芝居がかった仕草をする。
「君に勝負を申し込むわっ」
「そういう事なら受けて立つわ」
気が付くと、隣に絢辻司が立っていた。
「……セイバー、どうやって制服を用意したんだ」
「言ってなかったかしら、監督役の二人に用意してもらったのよ」
しれっと絢辻、ではなく制服姿のセイバーが答えた。
「わぉ、こうして見るとほんとそっくりねぇ」
「それで、どこでやるつもりですか」
「人気がないと言ったら、やっぱりあそこよねぇ。さぁ橘君、ゴーゴーゴーよっ」
またはるかが純一の手を取って走り出す。これから起こるであろう、サーヴァント同士の死闘よりも、女神がまた触れてくれた事を意識してしまう純一だった。
「なるほどね。確かにここなら人気がないわね」
ポンプ小屋前の空き地。制服姿のセイバーは、純一を下がらせ、はるかと向かい合った。
「やる気まんまんねぇ。いいわ、いいわぁ。じゃあ、ランちゃんお願いね」
「御意」
はるかの命で、虚空から二本の槍を携えた槍騎士が現れる。相変わらずの美男子だ。槍の内の一本は毒々しい赤色の長槍。もう一本は短い槍で黄金色に輝いている。
セイバーが魔力で一瞬にして戦闘装束に着替え、美貌の槍騎士に相見える。右手で剣を抜き、左手で円形の盾を構える。セイバーが何かを感じたのか、眉をひそめた。
「チャーム? 笑わせるわね。そんなもので私が倒せると思ったのかしら」
槍騎士が不敵な笑みを浮かべる。
「これは呪いのようなものでな。自分ではどうしようもないのだ。だが嬉しいぞ、セイバー。不抜けた敵ほどつまらないものは無いからな」
「言ってくれるじゃない」
ランサーが二本の槍を構え、じりじりとセイバーに近寄っていく。
「いざ尋常に勝負っ」
二人のサーヴァントが同時に吼え、聖杯戦争第一回戦が始まりを告げた。
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