暁 〜小説投稿サイト〜
アマガミフェイト・ZERO
十一日目 十二月一日(木)前編
[2/3]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話

(どうして性格が全然違うのかなぁ。セイバーも絢辻さんを見習って欲しいよ)
 教室でいつまでもぐずぐずしている訳にも行かず、鞄を持って純一も廊下に出た。下駄箱に向かう途中、何人か友人に声をかけれたが全て断った。
(すまない、セイバーが怖いんだ)
 断る度、心の中で謝罪した。もちろん口に出してセイバーに聞かれたら、何をされるか解ったものではなかったが、そう思わずにはいられなかった。

「わぁ、にぃに、ちゃんと前見てっ」
 えっ、と思った時にはもう身体を止める事は出来なかった。というか向こうは走っていたし。ショートカットの少女が慌て顔で、突っ込んできた。
 不可避の激突。廊下に響き渡る快音。尻もちを付く純一と少女。
「……美也、廊下は走っちゃいけないって知ってるか?」
「にぃにこそ、前ちゃんと見ないと危ないんだよっ」
 あいたた、と言いながらお互いに憎まれ口を叩く。ぶつかった少女は、幸いな事に純一があまりによく知る人物だった。
「にぃにってば、そんなんだから未だに彼女も出来ないんだよっ」
 立ち上がった少女が、ぷんっとふくれっ面をする。ぶつかって来たくせにえらぶるこの少女こそ、純一の最愛の妹、橘美也だ。さっぱりした短髪に、いたずら好きの子供のような顔付き。怒った顔も、子猫がむすっとしているような可愛さがある。少年のような身体付きがまた、彼女の生意気な妹としての可愛さを引き立てている。
「学校では、にぃには止せって言ってるだろ。大体お前、なんで廊下を走ってたんだよ」
「え、えっとそれは、その」
 美也があからさまにうろたえる。
「それにお前、最近僕をあからさまに避けてただろっ。土日だって家に居なかったし、月曜日になってからも、妙に朝や帰りが遅かったり部屋に籠ってたりしてたじゃないかっ」
「……にぃにの馬鹿」
 美也の表情が曇る。捨てられた子猫のような寂しそうな顔で、俯く美也。
 純一には、そんな顔をする理由は思いつかなった。だから、なんて声をかければいいか解らなかった。
「ど、どうしたんだよ」
 何かが弾けたかのように、突然美也が叫んだ。
「にぃにの、えっち、変態、すけべっ」
 そして美也は走り去っていった。茫然とするしかない、純一だった。

「遅かったじゃない」
 校門を出て、そろそろ人がまばらになってきた辺りで、ぞっとするような声がした。だが辺りには誰もいない。
「セイバー、姿を消したまま話しかけるのはよしてくれ。心臓に悪い」
「何よ、急に姿を現したら、余計目立つでしょうが」
「橘くーん、にゃんにゃんこうげきー。にゃんにゃんっ」
 セイバーと話をしていると、後ろから突然二本の腕が伸びてきて、はがいじめにされた。同時に、何とも言えない絶妙に柔らかいものが背中に当たった。
「えぇ、も、森島先輩っ?
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ