十一日目 十二月一日(木)前編
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(どうして性格が全然違うのかなぁ。セイバーも絢辻さんを見習って欲しいよ)
教室でいつまでもぐずぐずしている訳にも行かず、鞄を持って純一も廊下に出た。下駄箱に向かう途中、何人か友人に声をかけれたが全て断った。
(すまない、セイバーが怖いんだ)
断る度、心の中で謝罪した。もちろん口に出してセイバーに聞かれたら、何をされるか解ったものではなかったが、そう思わずにはいられなかった。
「わぁ、にぃに、ちゃんと前見てっ」
えっ、と思った時にはもう身体を止める事は出来なかった。というか向こうは走っていたし。ショートカットの少女が慌て顔で、突っ込んできた。
不可避の激突。廊下に響き渡る快音。尻もちを付く純一と少女。
「……美也、廊下は走っちゃいけないって知ってるか?」
「にぃにこそ、前ちゃんと見ないと危ないんだよっ」
あいたた、と言いながらお互いに憎まれ口を叩く。ぶつかった少女は、幸いな事に純一があまりによく知る人物だった。
「にぃにってば、そんなんだから未だに彼女も出来ないんだよっ」
立ち上がった少女が、ぷんっとふくれっ面をする。ぶつかって来たくせにえらぶるこの少女こそ、純一の最愛の妹、橘美也だ。さっぱりした短髪に、いたずら好きの子供のような顔付き。怒った顔も、子猫がむすっとしているような可愛さがある。少年のような身体付きがまた、彼女の生意気な妹としての可愛さを引き立てている。
「学校では、にぃには止せって言ってるだろ。大体お前、なんで廊下を走ってたんだよ」
「え、えっとそれは、その」
美也があからさまにうろたえる。
「それにお前、最近僕をあからさまに避けてただろっ。土日だって家に居なかったし、月曜日になってからも、妙に朝や帰りが遅かったり部屋に籠ってたりしてたじゃないかっ」
「……にぃにの馬鹿」
美也の表情が曇る。捨てられた子猫のような寂しそうな顔で、俯く美也。
純一には、そんな顔をする理由は思いつかなった。だから、なんて声をかければいいか解らなかった。
「ど、どうしたんだよ」
何かが弾けたかのように、突然美也が叫んだ。
「にぃにの、えっち、変態、すけべっ」
そして美也は走り去っていった。茫然とするしかない、純一だった。
「遅かったじゃない」
校門を出て、そろそろ人がまばらになってきた辺りで、ぞっとするような声がした。だが辺りには誰もいない。
「セイバー、姿を消したまま話しかけるのはよしてくれ。心臓に悪い」
「何よ、急に姿を現したら、余計目立つでしょうが」
「橘くーん、にゃんにゃんこうげきー。にゃんにゃんっ」
セイバーと話をしていると、後ろから突然二本の腕が伸びてきて、はがいじめにされた。同時に、何とも言えない絶妙に柔らかいものが背中に当たった。
「えぇ、も、森島先輩っ?
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