第二Q「いつもは感じるのに。」
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目を開けると真っ白な天井が目に入った。起き上り周りを見渡した。
「保健室?」
「覚えてないのか。HR中にいきなり倒れたんだ。」
本を読みながら言った。
「あとこれ。」
本を閉じポケットから一枚の紙を出した。
「これは?」
開いてみると病院の名前とその住所105と書いてあった。
「百合羽の入院先の病院名と住所。あと部屋番号だ。すまないが俺の代わりに見舞いにいってくれ。
お前が行くほうがあいつが喜ぶ。部活は俺から監督に言ってある。」
珍しい。彼から頼まれるとは。そこまで言うなら行きますか。
「わかりました。わざわざありがとうございます。」
そうして保健室を出た。
病院。
メモを見ながらようやく病院に着いた。建物はとても綺麗だった。新しく建てられたように見えた。
自動ドアに無視されながらも中入った。
105・・・ここか。
ドアを開け奥にあるカーテンを捲った。
その向こうにはたくさんの機会に囲まれたなか今もなお眠り続ける少女の姿があった。
しばらく立ち尽くしていた。すると陰に隠れた小さな手が目に入った。その手を握りしめた。
その手は雪のように白くひんやりしていた。その手には誰もが持っている優しいぬくもりは感じ
られなかった。
いつもは感じるのに。
どんなに握りしめても感じられなかった。ただ生きているという証拠の音が部屋中に響き渡った。
そのことを受け入れるのを体が拒んだのか涙が溢れ僕の頬をそっと撫でた。
まるで誰かに撫でられているかのように。泣きじゃくりそうなのを耐えながらずっと握っていた。
どうしていいのかがわからなかった。ただこんな事しかできない自分が惨めに感じた。
助けたいのに方法が思いつかない。そんな自分が嫌だった。
それからしばらく部活を休み、お見舞いに行った。
ピッ・・・ピッ・・・ピッ・・・っという音になぜか安心できた。
そんな時だった。
ガラッっと音が↓。
「あら先客かしら?」
後ろから女性の声がしたんだ。
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