第五十二話 ハイネセン混乱
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「アンドリュー・フォークですよ、議長。思い出されましたか?」
「アンドリュー・フォーク! あの男か!」
レベロが声を上げた。厳しい目でフォークを見ている。ファーレンハイトが妙な顔で“何者です”と訊いて来た。
「アンドリュー・フォーク准将。かつて同盟軍が帝国領に侵攻した時、作戦参謀としてあの馬鹿げた侵攻案を立案した人物ですよ。そして内乱が起きた時にはクーデター派の一員としてクブルスリー本部長を暗殺しようとした。間違ってもこんな所に居る人間じゃないんです」
皆が沈黙した。居ないはずの人間が居る、その意味を考えているのだろう。
「議長、フォーク准将と警備責任者はこちらで預からせていただきますよ。色々とこの二人には訊かなければならない事が有りますから」
レベロは無言だ。こちらの護衛兵が警備責任者を取り押えようとすると抵抗した。彼の部下もそれに同調する。面倒な奴らだ。
「いい加減にしてもらえませんか」
俺が注意すると抵抗は止めたが不満そうな表情を見せた。
「どれほど不満が有ろうと我々は勝利者で貴方達は敗北者なのだという事を忘れないでもらいましょう。我々を怒らせれば当然だが報復は苛烈な物になる。宜しいかな?」
ようやく大人しくなったか。フォークと警備責任者の二人を連れて今度こそビルを出た。レベロには身辺に気を付けろと注意しておいた。地球教か、或いは主戦派か、レベロを殺して帝国に罪を擦り付け混乱させる、そう考える可能性が無いとは言えない。
地上車に乗り込むとファーレンハイトが“良く分かりましたな”と話しかけてきた。フォークは失敗したんだ。他の人間が俺達から顔を背けて通り過ぎる時にあの男は脇に控えて道を譲る姿勢を示した。その方が俺を狙いやすいと思ったのかもしれんが、あれは軍人の作法だ。長年染み着いた作法が自然と出た、そんなところだろう。妙だと思って顔を見ればフォークだと分かった。あれが無ければ俺を殺せたかもしれない。
まあフォークは道具だろうな、何も分かっていないだろうから情報源としての価値はあまり無い筈だ。誰かがフォークを手引きしてビルの中に入れた。レベロは以前から俺と会いたがっていたからいずれは俺がビルに行くとそいつは予想していたのだろう。
俺が最高評議会ビルに行くと連絡したのは今日だ。手回しよく準備したところを見るとかなりの地位にある人間が絡んでいる可能性が有る。問題は警備責任者だな。彼が来るのは早すぎたしフォークを見ても何の反応も示さなかった。何らかの形で知っていただろう。何処かで関与しているはずだ。これを機にハイネセンでも大掃除が出来ればいいんだが……。
帝国暦 490年 7月 10日 ハイネセン コンラート・フォン・モーデル
ハイネセンのTV番組って反乱軍の言葉さ
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