第五十二話 ハイネセン混乱
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な」
「そうですね」
うん、和やかな空気だ。ほのぼのする。また一人来たな、若い男だ。お、礼儀正しいな、随分と前から脇に避けてる。他の奴は避けないんだけどな。
「誰が一番最後になるでしょう」
「さあ、ロイエンタール提督ですかな」
「ローエングラム公かもしれませんよ」
「なるほど、そうかもしれませんな。しかし、それは困る」
また笑い声が起きた。そうだよな、困るよな。皇帝が独身では。
脇に避けた男を通り過ぎようとした時だった、馬鹿が……。
「頭領!」
ファーレンハイトが叫んだ。若い男が腕から血を流して蹲っている。足元にはブラスターが落ちていた。撃ったのは俺だ。足元のブラスターを蹴って男から遠ざけると護衛の一人が急いで拾い上げた。若い男が顔を上げて恨めしそうに俺を見た。相変わらず顔色が良くないな、こいつ。
「ファーレンハイト提督、誰か人をやってレベロ議長を呼んでください」
護衛の一人が慌てて議長の執務室に戻った。二人の護衛が男を取り押え残りは皆ブラスターを構え周囲を警戒している。良いね、良く訓練されているらしい。周囲には遠巻きに人が集まり始めた。こちらを見ながら何かを話し合っている。
「頭領、これは? 一体何が有ったのです?」
ファーレンハイトに説明しようとした時、騒ぎが起こった。遠巻きに見ていた見物人を押しのけ制服を着た男達、軍人ではない、警察関係だろう、五人程が俺達に向かって近づいてきた。
「どうした、何が有った」
先頭の男が声をかけてきた。五十は超えているように見える初老の男だ。
「卿は誰だ?」
ファーレンハイトが尋ねると男は胸を張って
「この最高評議会ビルの警備責任者だ」
と答えた。そしてもう一度“何が有った”と問いかけてきた。視線は若い男を捉えている。
「その男が私を殺そうとしたのです。そのブラスターでね」
俺が目線で若い男と護衛が持っているブラスターを示した。警備責任者が唸り声を上げる。
「その男はこっちで預かる、ブラスターもだ。あんたにも話を聞かせてもらう」
偉そうだな、この野郎。
「その必要は有りません。この男は帝国で預かります」
「何だと」
俺が拒否すると警備責任者が顔を真っ赤にした。
「口封じをされては困るのでね」
俺の言葉にファーレンハイトが鋭い目で男を睨んだ。おやおや、警備責任者は今度は青くなって“どういうことだ”なんて言っている、忙しい奴だな。
バタバタと音がしてレベロがやってきた。
「どうした、何が有った」
「ああ、この男が私を殺そうとしたんです。議長は御存じでしょう、この男を」
「どういう意味だ、……見た事が有るな、いや私は君を殺そう等と考えてはいない。……しかし、見た事が有る……」
レベロが困惑している。薄情だな、こいつを忘れるなんて。
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