第五十二話 ハイネセン混乱
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んだよ。眼が輝いてるぞ。ファーレンハイトが顔を顰めているだろう。
「そうじゃありません。議会制民主主義を取り入れろなどと言っても皆拒否しますよ。何らかの形で領民の意見を統治に取り入れても問題が無い、貴族達にそう思わせる事が必要だと言っているんです。そのためにもエル・ファシル公爵領では善政を行う必要が有ります」
「……そういう事か」
不満か? レベロ。
「貴族達がエル・ファシル公爵領の真似をするのか、それとも別なシステムを作るのかは分かりません。ただ領民の意見を取り入れても良い、そう思わせなければ貴族領の統治は貴族の恣意に翻弄されるだけです」
レベロが唸っている。
貴族が内政担当者を任命し内政を委ねる、或いは諮問機関のような物を作り統治にその意見を取り入れる。方法は色々あるだろう、大事なのはあくまで自分達が最終的な権力を持っていると貴族達に思わせる事だ。そうでなければ彼らは消極的、いや拒絶するだろう。そう思わせるためには半大統領制が良いのだ。公爵が内政担当者を任命する、その形が良い。
いずれ貴族も気付くだろう。領民の意見を取り入れた方が失政が有った場合、貴族が負う傷は小さいという事に……。領民達から一方的に責められる事、不満に思われる事は少ないはずだ。権力を領民に委譲する以上責任も領民に負わせることが出来る。そこに気付けば積極的に領民の意見を統治に取り入れるはずだ。
「上手く行きますかな、頭領」
「さあどうでしょう、上手く行って欲しいとは思いますが」
まあ上手く行くだろう。レベロはエル・ファシル説得の目処が出来た所為だろう、俺達を機嫌良く送り出してくれた。というわけで俺とファーレンハイトは最高評議会ビルの廊下を歩いている。
「頭領も苦労が絶えませんな」
「戦争よりはましですよ、ガンダルヴァで戦って分かりました。あんなのはもう二度と御免です」
「それはそれは」
ファーレンハイトが苦笑している、護衛の人間もだ。
この廊下、あまり気分は良くない。結構人が通るのだが誰も俺達とは視線を合わせようとしない。今も一人顔を背けて通り過ぎて行った。気持ちは分かるがね、そう露骨に避ける事も無いだろう。頭に来るな、嫌がらせに能天気な会話でもしてやるか。
「ファーレンハイト提督は結婚はしないのですか?」
「また突然に……、気が付けば三十を過ぎていましたな。心の何処かで戦場で死ぬかもしれない、そんな気持ちが有ったのかもしれません」
最初は苦笑、次はしんみりとした口調だった。そうだろうな、周囲には夫を亡くして悲しんでいる未亡人とかいるだろうしそういうのを見れば結婚には二の足を踏むだろう。
「今後は結婚する人が増えるかもしれませんね」
「そうですな、平和になれば戦死を心配する必要も無い。小官も少し考えてみますか
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