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ファイアーエムブレム〜ユグドラル動乱時代に転生〜【外伝】
とある騎士の昔語り---その3---
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「……あっちに娘が嫁いだり、独立した身内が転居先に選んだりした家もあるんじゃないのか?」

 彼にそう言われると男たちは痛いところを突かれたようで押し黙る。 
 そこへ畳みかけるように繋げた言葉は

「だいたいがだ、正面切って戦うのはまずはオレらだ。 お前らは荷物運んだり重いケガを負った奴を礼拝所の神父さんとこ運んだりだとかそういう仕事をな、やってもらおうって寸法よ。 ばったり獲物に出くわしちまったらオレらに知らせに走ればいいんだ。 なっ、気楽にとは言わんが行ったらみんな死ぬみてぇに思う必要はこれっぽっちもねぇから安心してくれ」

 押し黙る村人達を見てもうひと押しだなと彼は思った。

「なぁ、この村は近隣で一番最初に出来たんだろ?  ……お前ら入植した時に言われなかったか? 向こう二十年間は免租ってな具合に」
「 『んだ』 『それがどした』 」
「そりゃオレが言ったからって必ずしも聞き遂げてもらえる訳じゃねぇが、免租を一年なり二年なり延ばしてもらったり、税の率を少し棒引きしてもらうとかな、……この大事件で被害が出たからって報告を代官にしてもらやぁ、わかるよな?」

 武力や権威で頭ごなしに従わせることももちろん可能ではあったが、それは現地に着いてからでも遅くはないし、なによりただでさえ少ない兵士を不満を持った村人の見張りに回さねばならないような状態は避けたかった。
 硬軟織り交ぜたと言うよりはむしろ軟に寄った説得に村人達は従ったが、これもまた彼を苦しめる一因となった……








 目的地への進路上にあるトゥワロ村で小休止を行った。
 そこはシィス村の母村とも言うべき存在で討伐隊への協力はすんなりと得られたが、場合によってはここにまで『怪物』が足を伸ばす恐れもある、いや、既に向かっている途中であるかも知れないので残る村人には厳重な戸締りや、夫や父が討伐隊に加わる家族は残留する家族のもとへ身を寄せ合うなどの対策を講じたようだ。
 再度出発した一向は、夜半過ぎにシィス村へと辿り着くのだが、村の入り口に篝火が盛大に焚かれ、それは村の長の住居前も同様であることを入口の見張りから知らされることになる。
 討伐隊の到着に安堵した見張りの中には、その場にへたり込んでしまうほどの者すらいた。
 一行の中で兵以外の者は村長の住まいなど、広さに余裕のある家々に分かれて休むよう命じたがトゥワロ村からの合流組は寝ずの番の交代員を引き受けた。
 彼らが到着する前に起こった出来事の詳細を報告するようヴォルツは問いただしたが、シィス村の人々は口々に興奮した様子でまくしたてるので、時系列順に出来事を把握するのに骨が折れた。






 ……村長の妻マノンは年長の娘ドロテと息子のエリクを連れ、暮らしの足しにと山
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