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とあるβテスター、奮闘する
裏通りの鍛冶師
とあるβテスター、苦戦する
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───を達成しなければ、僕たちは───!


「おい、アンタら大丈夫か!?」
「!?」
不意に。
閉ざされた出口の外側───不可視のオブジェクトに阻まれた先の通路から、男性のものであろう声が投げかけられた。

一瞬、幻聴を疑った。
SAO内で幻聴が起こるのかどうかは疑わしいけれど、そう思わずにはいられなかった。
だって、今の声が本物なら。
こんな不人気ダンジョンに、僕たち以外にわざわざ足を踏み入れる物好きがいたということだ。
普段ほとんど見向きもされないような場所に、それも絶体絶命のこのタイミングで、そう都合よく他のプレイヤーが通りかかる筈がない。
僕は知っている。この世の中は、そんなに都合のいいようにはできていない。
アニメやゲームじゃあるまいし、現実において天の助けなんてものはそうそう起こるわけがないんだ。

……いや。むしろ、それどころか。
今の声すらも、茅場晶彦によって仕組まれた心理的トラップである可能性も考慮するべきなんじゃないだろうか。
なにせ、相手はデスゲームなんていう漫画や小説でしかありえないような状況を作り出し、更にはこんな悪趣味なダンジョンを考えるような人間だ。
おまけに、プレイヤーが大量の敵がいる中に飛び込んだ瞬間、間髪入れずに出口封鎖、しかも結晶無効化エリアなんていう外道トラップを仕掛けるような人間だ。
そんな茅場晶彦なら、こうして窮地に陥っているプレイヤーに助けが来たと見せかけ、安心したところをホラー映画よろしく背後からグサッ!とかやられても何らおかしくはないはずだ───!

「オ、オイ、今の───」
「騙されるなリリア!今のは敵の精神攻撃だ!油断したところをやられるぞ!」
「は!?オマエ何言ってんの!?」
「いいから戦うんだ!僕たちは誰の手も借りない!自分の身は自分で守る!」
「いやオマエも戦えよ!!」
そうだ、きっとそうに違いない。
こんな不人気ダンジョンで、都合よく助けなんてくるものか。
僕は騙されないぞ、茅場晶彦ッ!!

「アンタら、苦戦してるようなら加勢するぞ!どうする!?」
「お願いします!!」
───と、そこまで言っておきながら。
「加勢する」という一言を聞いた瞬間、僕は我ながら見事なまでに掌を返した。

「……世の中、たまには都合のいい出来事があってもいいよね、うん」
「何がしたかったんだオマエは……」
絶望的な状況の中で手を差し伸べてくれた通りすがりの誰かさんに、僕は一も二もなく即答した。
なんだかリリアの呆れたような声が聞こえた気がするけれど、それこそ幻聴に違いない。
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