六日目 十一月二十六日(土)
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「で、古武術研究部の部室で、何をするんですか?」
はるかが、ふふふっと隠していた宝物を見せる時のような笑みを浮かべる。
「お宝をさがすのよっ」
なんでも、おまじないの為に何か由緒あるお供えものが必要との事だった。はるかの話によれば、古武術研究部はかなり真面目に活動している部活で、OBやOGから古代の人々が使っていた刀や剣に槍などの武具の類が、展示品兼資料として寄贈されるのだという。
「ここなら、由緒あるお宝があるに違いないわ。さぁ、ゴーゴーゴーよっ」
またはるかに手を掴まれて、純一の胸の奥がとくんと跳ね上がる。
「も、持ち出して大丈夫なんですかっ」
「許可はもらってるから、ノープロブレムよ」
女神の強引さに振り回される事も、純一には幸せだった。
「次はどこに行くかと思えば、ポンプ小屋ですか」
「そうよ、ここなら誰にも見つからずににすむじゃない」
輝日東高校の裏手のフェンスには、人一人が通れる穴が開いている。そこを通りぬけて少し歩くと、小さなポンプ小屋がある。古武術研究部でお宝″を見つけた後、はるかに連れられた先が、ここだった。
「さぁ、さっそく、模様を描くわよぉ」
嬉々としてはるかが、小屋に置いてあった黒い箱を開けて、黒い液体と刷毛を取りだす。
はるかが言うには、それも魔術研究部から借りてきたものだそうだ。
「うん、グーねっ。我ながら完璧かも」
「確かに、いかにもって雰囲気でてますね」
でしょでしょ、と女神が太陽のような笑みを浮かべる。
「それで、次は何をするんですか」
えっとねぇ、とはるかが再び資料に目を戻す。
「わぉ、後はお供え物を置いて、呪文を唱えるだけですって、いよいよねっ」
こほん、とはるかが芝居がかったしぐさでお宝″を魔法陣の上に置く。
「ご利益、あると良いですね」
「だってケルト民族の槍よ、すっごく魅力的じゃない。さて、いくわよー」
はるかが、すぅっと息を深く吸った後、彼女の雰囲気が一変した。まるで呪いをかける妖艶な魔女のように、彼女は朗々と呪文を唱え続けた。そして呪文の最後、彼女は現実と異界を隔てる見えない壁を、引き裂かんばかりに叫んだのだ。
「いでよっ、サーヴァント」
黒い液体で描かれた線が、白く輝き出した。そして、ばちんっという音と共に、青白い光の塊が魔法陣に中に落ちてきた。光はやがて人の形になっていく。輝きが薄れていき、片膝を付いて忠義の姿勢を取る男騎士が現れた。
「召喚の呼び声に導かれ、ランサー、参上いたしました」
「オーキードーキー、大成功ねっ」
騎士が顔を上げてはるかを見る。純一は、男のあまりに整った顔立ちに、はっとなった。男の容貌は、同じ男である純一が見てもあまりに凛々しくて、見ていると頭の中がぐらぐらした。
(おいおい、俺にそんな趣味は
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