六日目 十一月二十六日(土)
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純一は思うのだ、はるかの魅力の一つは、楽しげな表情の豊かさだと。明るく、ノリの良い性格に合わせて、はるかの顔に色々な笑顔が現れる。その変化の連続が、森島はるかの身体的な魅力と相まって、更に彼女を至高の存在に押し上げているのだ。
「さぁ、ジョン、いくわよー」
はるかが純一の手を掴み、図書室から彼を連れだした。
「あ、先輩、どこに行くんですかっ?」
「助けてくれるんでしょう? ゴーゴーゴーよっ」
ふふっと、はるかは良い事を思いついた幼子のような笑みを浮かべる。
そんな彼女を見ながら、純一は自分の気持ちが晴れやかになっていくのを感じていた。
(森島先輩、やっぱり可愛いよなぁ。今日はツイてるぞっ、また先輩と一緒に過ごせるなんて)
突然訪れた女神の気紛れに、純朴な幸せを感じる純一だった。
「で、先輩、ここ何部の部室ですか?」
森島はるかに連れられて純一が来たのは、見るからに寂れ果てている感じの部室の前だった。
「うん? えっとねぇ、古武術研究部の部室よ」
「……そんな部があったんですね、うちの学校には。それで、ここで何をするんですか?」
(というか先輩はこんな部ともつながりがあるのか。先輩の人脈の広さはさすがだよなぁ)
「ふっふっふ、これよ橘君」
片手に抱いていた黒い分厚い一冊の本を、はるかは差し出した。その本には魔術研究部研究報告書″と書かれている。
「先輩、意味が解りません」
(というか、そんなあやしげな部もあるのか、うちの高校には)
「もうっ、橘君はイケずねぇ。なーんて、確かにこれだけじゃ解らないか。うんうん、教えちゃうわ。実はね、響ちゃんの事なんだけど……」
塚原響は森島はるかの親友だ。しっかり者で、スポーツも勉強も出来、はるかが困った時にいつだって救いの手を差し伸べる女神の騎士″。水泳部の部長でもある。だが塚原響にはコンプレックスがあった。自分が強面であるという事だ。それは、彼女が水泳部の勧誘をして水泳部に入部した学生の数を調べれば、客観的事実であると解るだろう。そんな自分の容姿故に、彼女は恋愛に対して苦手意識を持っていたのだ。
森島はるかは、そんな塚原響が、今年は自分のコンプレックスを克服して、恋愛に前向きになろうと決心したと語った。そしてはるかは、親友として響を応援するのだ、と。
「先輩、意味が解りません。その事と、その本と、この部室が、どんな関係があるんですか?」
「もぉー、せっかちなんだから。恋といえばやっぱり、おまじないじゃないっ。この本にね、どんな願いも叶えるおまじないの方法が載ってたのよ」
「お、それはちょっと興味ひかれますね」
純一が話にのってきたのが嬉しいのか、はるかの表情がきらめく笑顔でいっぱいになる。
「でしょでしょー、さっすが橘君。わかるねぇー、きみぃー」
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