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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百五十話 邂逅
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ベルク伯が絡んでいたようだ」
「まさか……」
私の言葉にラートブルフ男爵が笑みを浮かべた。何処か禍々しい笑みだ、昔はこんな笑顔をする男ではなかった……。そう思うと胸が痛んだ。
「それだけじゃない、他の人間には知らせることなく動いていた。どうやら周りを疑っているらしい。かなり用心深くなっている」
「……馬鹿な」
「本当だ」
どういう事だ。下手な詩を作っているだけの男だったはずだ。他人を疑う? 育ちの良いボンボンだったはずだ。それが謀略家としての顔を見せている……。ラートブル男爵がこちらを見ている。深刻な表情だ、彼もおかしいと思っているようだ。
「誰か裏にいるという事か」
「多分、そうだと思う。誘拐事件も彼が仕切った。誰かが彼の背後にいる……」
誰だ? フェザーン? いやルビンスキーか? 或いは同盟か……。
「それで、今はそれを探っているのか?」
「いや、それは止められている」
その言葉にホッとした。近づくには危険すぎる、死を覚悟する必要が有るだろう。ラートブルフ男爵が笑い声を上げた。私がホッとした表情を見せたことが可笑しかったらしい。
「正直彼の背後を探れと言われると思ったよ、所詮は消耗品だ。だがそうじゃなかった。キスリング少将、彼は私の上司なのだが、彼がその必要は無いと……。ヴァレンシュタインが止めたそうだ」
「ヴァレンシュタインが……」
「ああ、無茶をさせるなと釘をさされたらしい」
「そうか」
相変わらず甘い男だ、だが悪くない。それが有るから私もこうして生きている。そう思うと自然と笑い声が出た。ラートブル男爵も笑っている。
「そろそろ失礼させてもらうよ、ヘル・ファルマー。会えて良かった」
「私もだ、ラートブルフ男爵」
「いつか、帝国に戻れたら、卿と酒を飲みたいな」
「ああ、その時は訪ねていく」
席を立ち、彼がドアに向かって歩きだした……。
ランズベルク伯アルフレッドか……。一体背後に誰が付いているのか……、調べる必要が無いという事は見当は付いているという事か……。嫌な予感がする、ラートブルフ男爵はもしかするとスパイだとばれているのかもしれない。だとするとかなり危険だ。一度ヴァレンシュタインと話してみるか……。
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