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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百五十話 邂逅
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他の貴族達にしてみれば今まで協力してきた自分達を切り捨てるのかと憤懣を持っただろう。彼らが伯父上達を内乱に引き摺り込んだのもその憤懣が理由だったはずだ。……せめて貴族の半分でも救う策を考えていれば結果は違ったかもしれない……。

「卿は何故内乱に参加しなかった、いや、責めているのではない、ただ疑問に思ったのだ」
「参加しようと思った、だがヴァレンシュタインに止められたのだ」
「ヴァレンシュタインに……」
驚いたのだろう、まじまじと私を見ている。

「内乱に加われば今度こそ死ぬことになる。伯父上を苦しめるなと……」
「そうか」
「TV電話で伯父上と話をした」
「……それで」
「伯父上は私をヘル・ファルマーと呼んだよ」
「そうか……、ヘル・ファルマーと呼んだか……」

湿っぽい空気が漂った。ラートブルフ男爵は俯いている。もしかすると罪悪感に身をつまされているのかもしれない。話題を変えた方が良いだろう。
「卿は今何をしている。帝国への帰還を考えているのか」

私の問いかけにラートブルフ男爵が表情を消した。
「いや、ヴァレンシュタインのために働いている。不満分子の動向を探る役だ」
「……」
私の沈黙を非難と受け取ったのか、彼が自嘲を浮かべた。
「報酬は貴族としての帰還だ、領地も貰える。そのために以前の仲間を探っているのだ……、笑ってくれて良いぞ」
今度は声を出して笑った。低く厭な笑い声だ。

「……笑わんよ、生きるというのは容易な事じゃない」
「貴族として殺してくれと頼んだ、だが受け入れられなかった」
「……」
呟く様な声だ、掛ける言葉が無い。

「仲間を探る事で仲間の暴発を防げるかもしれないとヴァレンシュタインに言われた。私をスパイにするための言葉だとは分かっている。それでもその言葉に縋らざるを得なかった。貴族として生きるために……」
「そうか……」

貴族として生きるか……、昔はそれが誇りだった。貴族こそ帝国の選良であると疑いもなく思っていた。だが今なら分かる、貴族とはなんと不自由な事か……。貴族としての誇り、誇りではなく呪縛だろう。私は運よくその呪縛から逃れる事が出来た、ラートブルフ男爵は逃れられずにもがいている。

「そんな顔をするな、フレーゲル男爵」
「……」
「ヴァレンシュタインは悪い上司じゃない」
「そうか」

ラートブルフ男爵が笑みを浮かべている。何処か痛々しいような笑みだ。見ているのは辛かったが視線を逸らせば彼はさらに苦しむだろう。こちらも笑みを浮かべて彼を見た。

「先日、このフェザーンで反乱軍の高等弁務官、艦隊司令官が拘束される事件が有っただろう」
「本国のクーデターに関与していたという奴だな」
ラートブルフ男爵が頷いた。

「そのクーデターにランズ
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