GGO編ーファントム・バレット編ー
56.死への恐怖
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鈍い。
距離がついに一〇〇メートルを割った、と思ったその時だった。
死銃が、右手を手綱から離し、まっすぐこちらに向けた。握られているのは.......あの、黒いハンドガン。《五四式・黒星》
全身を凍りつかせ、拳銃を凝視した。ふっ、と音もなく、右頬に弾道予測線に真っ赤な指先が触れた。するとシュウが私の体を左に引っ張る。
直後、銃口がオレンジ色に発行し、かぁん!と高い衝撃音とともに私と後ろの空間を通過した。
「嫌ああぁっ!!」
今度こそ悲鳴が上がってしまった。背後の死神から眼を背けると、シュウが立ち上がり腰にぶら下がる暗剣《シンゲツ》を手に取り、飛来した二発目を漆黒の刃が叩き落す。
「キリト!奴を止める!その間にお前は、シノンを連れて逃げろ!!」
「やだよ......助けて......助けてよ.....」
立ち上がるシュウの足にすがるようにしがみついてしまう。死銃は、バギーに追いついてから確実に弾を命中させる作戦に切り替えたのか、銃弾は止んだもののひずめの音がじわじわ大きくなる。
「シュウ、待て!!シノン......、聞こえるか、シノン!」
不意にキリトに名前を呼ばれたが、返事ができなかった。
「シノン!!」
「落ち着け、シノン!!」
二人の鋭い声にようやく悲鳴が止まる。首をわずかに動かして、私を守ってくれてる少年と黒髪を長くなびかせる少年と捉える。前方を睨み、限界までアクセルをあおりながら、キリトは強張ってはいるがいまだに冷静な声で言った。
「シノン、このままだと追いつかれる。ーー君が奴を狙撃してくれ」
「む......無理だよ......」
首を横に振った。右肩にはずしりと重いヘカートUの感触があったが、いつもなら闘志を与えてくれるその質量も、いまは何も伝えてはこなかった。
「当たらなくてもいい!牽制だけでいいんだ!」
「......無理......あいつ......あいつは......」
過去から蘇った亡霊であるあの男は、例え12・7ミリ弾が心臓に命中しようと泊まりはしないとそう確信していた。
「それなら俺がその銃を撃つ!!」
その言葉は、私の中にわずかに残った何かーー恐らく、プライドの小さなかけらを揺り動かした。
(ヘカートは.......私の分身。私以外の......誰にも扱えない......)
のろのろとした動きで、肩からライフルを外し、バギー後部を横切るロールバーに銃身を乗せ、恐る恐る体を起こして、スコープを覗き込む。
拡大倍率を限界まで下げられていたが、それでも一〇〇メートル以下の近距離ゆえに、死銃の駆ける馬の影は視野の三割以上を埋めていた。
倍率を上げようとしたが、その手を止めた。
この以上拡大す
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