第8話「春休」
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「カネ、キン、メシ、ユウキョウ……」
完全に金に関する呟きだった。これでもしネギの耳に届いていたら、きっと彼はショックを受けていただろう。兄のように慕うタケルが金のことばかりを呟いていたのだから。
だが、実際はネギには聞こえていなかったらしい。それどころか「タケルさん、呪文つかえたんですか?」と着地した途端に、ネギのさらに尊敬のまなざしがタケルを襲っていた。
ずっと金に心を奪われていたタケルだったが、そこでやっと我に帰ったらしい。一瞬だけマズイような顔を見せ、だがすぐに「まぁ、な」とだけ付け加えた。
……どうやらネギの勘違いに乗っかることにしたらしい。
「だから、先生が僕の副担任に!? か、感動です、タケルさんもまほ―――」
最後までいいかけたネギの口を咄嗟に遮った。「もが」とネギの言葉が意味を失い、くぐもる。ネギが何事か、と目を見開いたとき、聞き覚えのある少女の声が聞こえた。
「……びっくりした――」
そこに立っていたのは和服姿の黒髪の美少女。
しまった、という顔を見せるネギと、やはり無表情な顔のタケル。魔法を見られたと思ったネギは完全に錯乱してワタワタと騒ぎ出す。
「どこのどなたか存じませんが、今のはそのあの〜、アレです。今流行のワイヤーワークっていうかCGでして――」
意味不明な言い訳をしようとするネギに、タケルはため息をついてそっと一言。
「――近衛さんだ」
「……て、え?」
タケルの言葉がネギの耳に届いたらしく、今度は子供らしい歳相応な反応をして見せた。
「わ〜、これすごい着物ですね、キレーッ! このかさん、なんでそんな格好を?」
「ネギ君とタケル先輩こそ、どうしてこんな所に?」
ネギがなぜか口ごもったのでタケルが答える。
「いや、俺は学園長に用事があって」
「そうなんやー」
木乃香が不思議そうに答えた時、後ろで「木乃香さま〜、どこですか!?」と聞こえてきた。
「ん……アレは? あ……アカン」
木乃香がそれに気付き、慌てて走りだす。
「ネギ君、先輩。ウチ逃げな」
「え……逃げっ? 実は僕もなんです!」
そのまま、逃げ出す二人をタケルはボケッと見つめて心の中でエールを送り、その学園長室に向かおうとして腕を掴まれた。しかも両腕を。
「ん?」
なんだ、と思う間もなくネギと木乃香に引っ張られた。
「……ちょ、おい」
「先輩、はやく逃げなアカンえー!」
「タケルさん、早く!」
「いや、俺は学園長に……」
「「――行きましょう」」
どうやらタケルに反論の余地はないようだった。
「えー、木乃香さんがお見合いーー!?」
逃げ込んだ教室でネ
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