第8話「春休」
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見せたときに発した冗談交じりの殺気を見事に無視しおった……相当な実力者のようだ、しかも学校ではその姿を一切見せん」
「……」
黙って耳を傾ける茶々丸に、言葉を続ける。
「ふふん、確かあやつはまだ15、6だったな。面白い、いつも人間は貧弱なくせに、時々思い出したかのように強者になるべく存在を生み出しおる」
ふふふと不気味な笑みを浮かべる彼女に、茶々丸はそっと静かに、タケルのデータに少し付け加えるのだった。
――マスターに気に入られた不幸な先生。がんばってください。
と。
夕日が影法師をより長く伸ばし、風が涼やかに流れ、親子が手をつないで楽しげに歩く。
なんともいえない幸せな光景を邪魔するかのように一人の男が親子の横を走りぬけた。和やかに笑っていた親子の目が丸くなり、穏やかな雰囲気は見事にその男によって壊されてしまった。
その男、タケルは爆走していた。「スーツ着込んでますが……え、それが何か?」的な勢いでそれはもう見事なほどに爆走していた。
「給料があがったら……」
先程からそればかりを呟いている。余程貧乏に生きてきたのだろうか?
「給料があがったら……見えた!」
学園が彼の目に映り、その瞬間には全力で飛び跳ねていた。いくつもの家屋を過ぎ去り、到達点は学園の玄関。学生達が最も出入りを果たす下駄箱の前に。
「――あ」
「……む?」
一人の少年は杖に跨り、下ばかりを気にしていた。それは無理もないだろう。高さ数十Mのところに人がいるとは思わないし、生徒達に追われていたのだから。
もう一人の少年は学校ばかりに目をやっていた。それは無理もないだろう。何せ、今彼の頭を支配しているのは給料のことばかりなのだから。
それは他所見をしていた二人とっては、予想外に。だが、当然に。
空を飛んでいたネギと空に跳ねていたタケルは見事に衝突を果たした。
「うわわわ、タケルさん!? どどどどうしてこんな高いところに!?」
「……言ってる場合か?」
二人がもつれあって学校に落下する。
「うっわわわ、こんがらがって魔法が使えない〜!?」
ネギが慌てて腕や足を振り回す。タケルが落ち着かせるように一言。
「俺に任せろ」
その言葉に、ネギの混乱は収まり、動きをピタリと止めた。とりあえず二人してもつれ合っていたところを解いて、タケルがネギを背負う形になる。その時点で残り数M。
本来ならばそのまま着地すればいいのだが、その時のタケルはどこか思考回路がおかしかった。何やらブツブツ言いながらその場に着地したのだ。それに伴い、足から蒸気のようなものが噴出し、その衝撃を全て緩和した。
ちなみに、呟いていた言葉は、
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