第8話「春休」
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―……まだ大丈夫か?
少しだけ困ったように頭をかき、住所が書かれている紙に目を見やりながら歩く。終業式に学園長に頼まれたことがあったのをすっかり忘れていたのだ。明日にある始業式の準備を始めた時、偶然にも紙を見つけ、その用事を思い出したのだった。
――真祖にして最強の魔法使い、エヴェンジェリン、か。
実はこれから向かう住所の人物について学園長から教えられていた。何でも「何も知らずにいくのは少し危険じゃからの」だそうだ。
真祖という言葉に、ミッションで戦った吸血鬼を思い出してしまう。
人語をあやつり、人間と似たような姿で、強化スーツ以上の力に、様々な能力と再生機能つき。という正にバケモノと呼ぶにふさわしい存在だった。実際、あれはガンツの採点でも100点だったわけだが。
昔の話を思い出していたらいつの間にか目的地に着いていたらしい。
「……ここか」
足を止め、周囲に目を配る。木造の一軒家が堂々と佇んでいた。辺りには木々が立ち並び、側で流れる小川が一層にさわやかな空気を醸し出している。
どこか和みそうになる自身を戒めつつも呼び鈴を鳴らしドアをノックする。
「学園長の使いで来ました。大和猛です」
・・・・・・。
返事がないため、もう一度繰り返す。呼び鈴を鳴らし、ドアをノック。
・・・・・・。
やはり返事がない。
「留守か?」
小さく呟いたところで「――どなたですか?」と扉が開いた。
「大和猛です。学園長の使いで来ま――」
応対のためにでてきた女性に見覚えがあり、言葉が止まった。
「――絡操さん?」
「猛先生、こんにちは……マスターに何か御用でしょうか?」
――マスター……誰だ?
タケルの疑問を解決するかのように、その人物は現れた。
「何のようだ……大和猛?」
「……エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル」
タケルの呟きに、エヴェンジェリンはニヤリと笑みを浮かべる。
「ほう、貴様が学校にきて1,2度しか顔を合わせていないというのに、よく私の顔を覚えていたな」
「それが仕事だ」
「それで、何のようだ?」
「……学園長に『夜のバケモノ狩りを協力させろ』と言われてきた」
その言葉に、彼女はピクリと眉を震わせて怪訝な顔を見せた。
「そうか、お前があのバケモノ共を……にしては魔力も気も全く感じんが」
どうやら学園長も、目の前のエヴェンジェリンも、星人のことを単なるバケモノと考えているようだ。
――そういえば。
楓のことを思い出す。
――彼女は星人を魔物、と呼んでいたな。
どうやらこの世界には本当にバケモノらしき存在が複数のタイプで存在している
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