第百三十三話 小豆袋その四
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「御主も死ぬつもりであろう」
「ですが退きとなれば」
「言った筈じゃ、多くは言わぬぞ」
「では」
「他の者も同じじゃ、皆僅かでも死ぬつもりならば許さぬ」
断じてだというのだ。
「新五郎、御主もじゃ」
「ですか」
実は林も名乗りを挙げようとしていたが彼も許されなかった。
「忠三郎、又左、鎮吉、皆駄目じゃ」
「ですが殿、後詰は誰にしますか」
丹羽がおずおずとした口調で頑なにさえ見える信長に問うた。
「必ず置かねばなりませんが」
「わかっておる、しかしじゃ」
「必ず生きて帰るつもりの者でないとですか」
「僅かでも死ぬつもりなら死ぬ」
今は特にそうだというのだ。
「だからじゃ」
「生きて帰るつもりの者ですか」
「誰かあるか」
信長はまた家臣達に問うた。
「褒美は思いのままじゃ」
「さすれば」
ここで名乗りを挙げた者がいた、それは誰かというと。
「猿か」
「はい、それがしが後詰を務めます」
いつものひょうきんな仕草と口調でいささか軽く言う羽柴だった。
「それで都に戻った時は母上とねねの望むものを」
「それだけでよいか」
「おっと、それがしの石高はとりあえず充分ですので」
今で十二万石だ、織田家の中でも大身である。
羽柴はここはこれ以上の石高になれば周りからいらぬ嫉妬を買うと考えたのか信長にこう申し出たのである。
「小竹を十万石にして下されば」
「それでよいのじゃな」
「はい」
それで充分だというのだ。
「それがしにしましては母上とねね、それに姉上に妹が望むものの褒美を」
「では御主には茶器もやろう」
信長は己のことを言わぬ羽柴にあえてこれを出した。
「望む茶器を一つな」
「おお、茶器をですか」
「そうじゃ、やるからな」
「有り難きお言葉、では必ず戻り」
「褒美を貰うな」
「是非共」
「よし、後詰はこれで決まりじゃ」
羽柴に決まった、だが信長はさらに言う。
「他に生きて帰る者はおるか」
「それがしが」
「それがしもです」
加藤嘉明と福島だった、そしてその他には。
「何の、それがしが暴れてやるわ」
「わしもじゃ」
「それがしもおるぞ」
「わしを忘れるな」
浅野、池田輝政、黒田長政、蜂須賀家政も出た。この六人も名乗り出る。
そして最後に加藤清正だった、不敵な笑みでこう名乗った。
「ではわしも十字槍で思う存分」
「そしてそれがしもです」
羽柴が信長に石高のことを頼んだ秀長も出た。
「兄上に頼まれただけで何もせぬというのは」
「おお小竹、御主も一緒か」
「いつも一緒ですぞ、兄上」
秀長は微笑み顔を明るくさせた羽柴に答えた。
「それでは」
「うむ、ではな」
兄弟で笑い合う、そしてだった。
信長は話が終わるとす
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