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SeventhWrite
道化少年
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 夕日がまだ沈んでいない町をひたすら全速力で僕は走っていた。今から起ころうとしている悲劇を止めるために。
 初めに感じた違和感は転校生が水瀬君と接触した事だった。
 彼が小説を書き始めたタイミングで転校してきたのだからもちろん登場人物ではないかと疑っていたけど、水瀬という名前を水瀬君が使うとは思えないし自分を絶対に登場させないので(作家として自分を登場させるのはタブーらしい)彼女は登場人物ではないのだろうと思った。その後に安土山さんから水瀬さんの旧姓を教えてもらい、もしかしてと考えてはいた。でも確信には至らなかった。
 それに放課後に転校生が水瀬君を探していたのもただ仲良くなっただけなのかと思い、まさか彼女が危険な状況であるとは気付けなかった。
「間に合え…」
 物語の時間的には今はもう峰岸大樹に捕まっているだろう、だから僕は最終的に事件が起こる場所に先回りして、二人が来るのを待つ。

「やぁ、そんなに急いでどこ行くの?」

 そんな思考をしながら目の前の十字路を左に曲がった時、彼は現れた。しかも目の前に。今から速度を落としても止まることは出来ない。
 だったら…

 ビッタァァァァァァァン

 とっさに斜め方向に飛び、前回り受身で彼を避けた。
 痛覚が無くて良かった……なんて考えている場合じゃない!!
 すぐさま起き上がり後ろを振り向くとそこには……

「なんでだよ」

 サッと前髪を手ですいて僕に流し目を送る変態(わたるくん)が立っていた。
 格好は制服で右手には学生カバンを持っている。
 何でか今さら下校しているみたいだった。
 ホント、何で今さら帰ってるんだ?部活は一時間以上前に終わっているだろうに。

『白々しいわ、綾文。貴方が彼を動けなくしたんじゃない』

 すっとぼけた僕に耐えかねたユウキが僕の脳内にツッコミを入れた。僕とユウキは何時でも何処でも糸を通じて思考の共有が出来る。ただユウキは夜型で夕方まで活動しない(起きない)。
 はいはいそうですよ、僕が意識が飛ぶくらいのグーパンチで眠らせてあげたんだよ。

『全くもう、いくら不快なアプローチされているからって自分を好いている人に対して酷い仕打ちね』

 いいんだよ、こいつには少しでも友好的な態度をとると…いやとらなくても勝手に周囲でピンクな噂が立っちゃうんだよ。

『もう…頑固な人』

 ちょっと待て、何だそれは…まるで僕がツンデレで本当は好きだけどあえて彼に対して冷たい態度取っているみたいな事を言うなよ。

『……………』

 く、言いたいだけいいやがって…

「…また人形の彼女と作戦会議?」
 ずっと一人で無言なまま表情を変えているという危ない人になっていると渡君が全てを見透かしたように僕に聞く。
「渡君
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