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八条学園怪異譚
第三十六話 美術館にその二

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「御飯を食べないとね」
「うん、だからね」
「白い御飯が好きなのよね」
「そうなの。けれどそれって私だけじゃないでしょ」
「お母さんもだしね」
 当然父も愛子もだ、もっと言えばチロも食べるものは御飯である。
「やっぱり御飯よね」
「朝は絶対にね」
「ただ。うちはそうだけれど」
 母はここでこう言う。
「聖花ちゃんのところは違うのよね」
「聖花ちゃんのお店はパン屋さんだからね」
 パン屋ならばというのだ。
「朝は絶対にね」
「あの娘は逆に朝は絶対にパンって言ってたわね」
「そうなの、聖花ちゃんのお家にお泊りした時もね」
 その時はいつもだというのだ。
「絶対パンだったわ」
「流石パン屋さんね」
「パンと目玉焼きと牛乳とサラダね」
 そういうものが出て来るというのだ。
「朝は絶対にそうなのよ」
「洋食ね」
「聖花ちゃんはお昼は御飯でもいいけれど」
 愛実と逆だが同じと言えた。
「朝はパンじゃないと駄目っていうのよ」
「そういえば聖花ちゃんうちにお泊りした時もね」
 その時もだというのだ。
「御飯出て少しびっくりしてたわね」
「そうでしょ、牛乳も出ないし」
 それもあってというのだ。
「最初はびっくりしてたわね」
「朝食もそれぞれだ」
 父は梅干を口の中に入れつつ言う。
「御飯もパンもある」
「どちらもね」
「知ってる人でケロッグの人がいたな」
「ケロッグ?」
「それだ」
 それが出て来たというのだ。
「牛乳をかけてな」
「あれ美味しいけれど」
 愛実の感覚ではおやつだ、ケロッグも嫌いではないが彼女の感覚では朝食ではなくそちらだというのだ。
「朝はね」
「わしも朝はこれだ」
 御飯だというのだ、今度は納豆を食べつつ言う。
「これじゃないとな」
「力が出ないっていうのね」
「せめてお粥かお茶漬けだ」
 どちらにしても御飯である。
「それを食べないとな」
「うちはそうよね」
「そうだ、食べてだ」
 そしてだというのだ。
「今日も学校で頑張れ」
「そうするわね」
「さて、私もね」
 愛子も食後のお茶を飲みつつ言う。
「歯を磨いたらね」
「お姉ちゃんは塾の講師のアルバイトよね」
「そうよ、今日も言って来るわ」
 妹に穏やかな笑顔で返す。
「そうしてくるから」
「わかったわ、それじゃあね」
「二人共塾や部活のない時はね」
 母はその娘達に言う。
「お店も御願いね」
「うん、わかってるから」
「その時は任せてね」
「お店のことは忘れたら駄目だからね」
 それが家の仕事だ、だからだ。
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