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駄目親父としっかり娘の珍道中
第43話 日焼けにご用心
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 薄暗い場所。一言で言えばそんな場所だった。回りに見えるのは人間の背丈のおよそ2,3倍はあるであろう竹やぶしか見えない。そんな竹やぶの中を数人の浪人達が必死に走っていた。
 彼等の手にはそれぞれ抜き放たれた鋭利な刀が握られている。普段ならば鞘に収められている筈のそれを握っていると言う事は余程の事である。
 そして、今彼等はその余程の事の為に走っているのであった。
 浪人達は今、一人の男を追っていた。遥か前方を走って逃げる男。その男を仕留めんが為に浪人達は必死に、息を切らせながら走り続けているのであった。
 掛け声と共に、一人の浪人が先回りし、逃げていた男の前方に生い茂っていた竹やぶを切り捨てる。その様を目の当たりにした男の足が止まる。
 その隙にと背後を走っていた浪人達も追いつき、周囲を取り囲む。
「追いついたぞ。さぁ、どうする? 此処で我等と一戦交えるか? それとも、侍らしく腹を切るか? 貴様も侍なら尋常に勝負いたせ!」
「尋常にだぁ?」
 浪人のその言葉に反応したのか、男が笑みを浮かべる。腰に挿していたそれに手を掛け、今にも抜き放とうと構える。
 咄嗟に浪人達が身構えた。何時切り掛られても対応出来る様にする。それが武士としての初動作でもあるのだ。
 だが―――
「冗談じゃねぇ! ちゃんばらごっこがしたいんだったら近所の公園でガキ共としてな、この時代遅れ共が!」
 捨て台詞を並べ、一目散にその男は逃げ去った。その光景に浪人達は唖然となる。
「逃げるのかよ! あんだけフラグ立てて置いてそれはないんじゃないの? 普通は此処で一戦交えてカッコいい殺陣を演じる場面じゃん! 読者の期待を裏切るな!」
「けっ、何が読者の期待だ? 廃刀礼のご時世にちゃんばらなんざ、ダボダボジーンズを履く奴みたいに時代遅れなんだよ! 今時の若者はそんなのには興味ねぇって事に自覚持てやこの時代遅れ共! だからてめぇらはモテねぇんだよ!」
 等と情けない様な台詞を並べ挙げてその男、坂田銀時は逃げ出した。銀色の天然パーマに死んだ魚みたいな目がトレードマークの一切やる気を感じさせないこの物語の主人公の一人である。
 まぁ、要するに殺陣を演じるのが面倒臭いので適当な理由を並べて逃げたのだ。
 もし、これが時代劇とかなら、素直に刀を抜いて華麗に殺陣を演じるだろう。だが、この男は極力無駄な体力を使いたくない一心だった為にそんな理由を並べ挙げて逃げ出したのである。
 全く情けないの一言に尽きる光景であった。
 そうこうしていると竹やぶが終わり、目の前に聳え立つは白い壁で塗り固められた塀であった。
 幸い高さはそれほどでもないので銀時は颯爽とその塀によじ登る。
「貴様! 我等と死合え!」
「悪ぃ、俺四時からやる洋画の再放送見なきゃならねぇんで帰らないといけないん
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