第27話 龍の巫女
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る有希。もっとも、俺の右腕を枕代わりにして、俺の肩の直ぐ傍からの言葉。
つまり、現在の状況は、狭い布団の中で俺の瞳を彼女の瞳が支配し、右腕の動きは彼女の頭が押さえ付けている状態。
但し、その彼女の動き自体を、彼女を抱き寄せた俺の左腕が阻害する。
「若干の血圧の上昇。及び体温、心拍数の増加がみられる」
お互いの吐息の掛かる距離。更に、彼女の鼓動を直に肌で感じられる距離からの言葉。
そして、
「しかし、誤差の範囲内」
僅かに首肯いた後に、そう口にする有希。その時に初めて、右腕に乗せられた彼女の頭部を感じた。この事実から推測すると、詳しい理屈は判りませんが、何らかの方法で彼女自身が俺の腕に重さを伝えないようにして居るのでしょう。
但し、この状況下ではいくら低血圧の俺でも、少々血圧が上昇したとしても仕方がないとは思うのですが。
確かに、俺自身は出来るだけ平静を保てるように訓練や修行を行っては居ます。しかし、流石にこの異常な状況下では……。
「え〜と、な、有希。少し疑問が有るんやけど聞いても良いかな?」
若干の血圧やその他の上昇が有るらしいのですが、それでも、意外に冷静な心理状態で有希に問い掛ける俺。
まして、慌てて跳ね起きるのも何かが違うような気もしますし……。
それに寝間着に関しては、お互いにちゃんと着て居るような感触を肌に伝えて来ていますから大きな問題はないように思います。……と言う事は、俺だけが泡を食って狼狽えるのでは、何か人間としての格や度量の差を見せるようで少し癪ですし。
俺と視線を合わせるように見つめた後、有希は微かに首肯く。
それならば、
「この状況下で、有希は何故そんなに冷静なのか、最初に其処の部分を教えて貰えるかな?」
更に言うと、何故、俺の両腕が彼女の感触に慣れているのか、と言う重要な問題に関しても同時に教えて貰えたら、非常に有り難いのですが。
出来る事なら、俺の方から問い掛ける前に。
確かに、昨夜眠りに就いた時の状況を思い出すと、彼女が俺と同じ寝具の上で就寝していたとしても不思議では有りません。
そして、この目覚めた時の状況は、同じ寝具の上に眠っていた彼女を寝ぼけた俺が抱き寄せた。この辺りが無難な予想でしょう。
しかし、状況的に見て不思議ではないとは言っても、この状態がさも当然と言う雰囲気で俺を見つめ返している彼女の雰囲気が不思議ではない事への説明には成り得ませんから。
「あなたは眠りに就くと手近な物を抱き寄せる癖が有る」
有希が半ば予想通りの答えを返して来る。俺の右腕の上に自らの頭を置いた状態。更に、お互いの吐息が届く距離で。
この状況下に置いて彼女の発して居る気は、どう考えても幸福感。彼女に取って
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