第27話 龍の巫女
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「――起きて」
…………何処か、向こう側の世界から、無機質な口調で話し掛けられる俺。
ただ、声音や抑揚などに表現される事のない何処か深い部分に、何かとても優しい物が含まれている。
そのような雰囲気の彼女の声。
これは、長門有希の暮らす世界にやって来てからの、朝の日課のような物。
但し、逆に言うと、今晩の羅?星との戦いの後に元々住んで居る世界への帰還が出来るように成る可能性が高いですから……。
今朝が最後の可能性も有りますか。
「朝」
そして、浅い眠りとも、覚醒とも付かない曖昧な状態の中で続けられる毎朝の日課のような言葉。
ただ……。
ただ、本当に、毎朝、誰かに起こされる生活と言うのも悪くはない。
微睡の中、何時ものように腕の中に有る布団を少し強く抱きしめる俺。
そう。起きなければならない事は判って居ても、簡単に目が覚める事など出来る訳がない。
「早く起きて」
妙にくぐもった声で、そう話し掛けて来る有希。
しかし、何故か今朝に限っては、このやり取りに多少の違和感が存在した。
確かに、寝起きですからそんなに鋭敏な感覚を持って居る訳でも有りませんし、その上、今の俺の状態は、病み上がりの状態。昨夜、眠りに落ちた時の状態から考えると完調と言う訳ではないのですが。
それでも……。
先ず違和感の第一点。有希の声が妙に近い位置から聞こえて来る事。
更に第二点。この鼻腔を満たす香りは、彼女の…………。
そして最後の第三点は、普段の朝ならば、声を掛けて来るのと同時に、ゆっくりと揺り起こされるはずなのですが……。
まして、それ以外にも……。
自らの腕の中に存在する温かく、そして、それなりの大きさを持つ物体の感触を確かめる俺。
適度に湿り気が有り、抱きしめた感触が妙に腕に馴染みが有る物体。
少し強く抱きしめると、その物体から俺の良く知って居る少女と同じシャンプーや石鹸の香りが漂って来る。
普段の朝ならば、これは被っていた布団。偶に寝相が悪かった。寝苦しかった朝などは、枕……なのですが。
そう考えながら、ゆっくりと、その温かな、そして柔らかい物体をまさぐる俺。
………………。
…………。
――――って、そんなモンの正体など、判り切っている!
もう少し眠って居たいと文句を言い続ける瞳と、呆けた頭を無理矢理に覚醒状態に持って行く。
その俺の瞳を、やや上目使いに見つめる彼女の瞳。その距離は、おおよそ二十センチメートル程度。
但し、未だ発育途上のその少女の身体は、俺の左腕に抱き寄せられて距離はゼロ。
「おはよう」
普段と何も変わらない落ち着いた雰囲気で、そう朝の挨拶を口にす
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