崑崙の章
第11話 「お土産?」
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」
「そうか……なら、それが済んだらでいい。すまないが伝令になってくれないか?」
「伝令、だと?」
華佗が眉を寄せる。
まあ、そうだろうな。
放浪の医師に伝令役をさせるなんて本来はありえない。
「どういうことだ?」
「ああ……正直、今の俺はただの旅人だ。信頼して伝令を任せる人が華佗しかいないんだ」
「? 厳顔に頼めばいいだろう? 彼女なら嫌とは言うまい」
「ああ。だが、桔梗は信頼できても、その部下は信頼できないんだ」
「……? あの魏延とかいう女のことか?」
「いや、彼女じゃない。たぶんだが……この街は、もっと大きなものに支配されている。その相手に書状の中身を見られたくないんだ」
「大きなもの……?」
「たぶん、だけどな。本当は裏づけが取れてから動きたいところなんだが……予想だとあまり時間がない。俺はともかく、華佗がマークされる。その前にここから動いて欲しいんだ」
市場で食材を集めるときに、ちらっと耳にした話。
やはり、この街、いや都市は商人の力が強いらしい。
その理由は……警備兵だ。
彼らは太守である厳顔に雇われているのではなく、市場の元締めに雇われているらしい。
屋台の売り子が、それとなく警備兵に金を渡しているのが見えた。
桔梗ならそんな不正は許さないだろう。
だから食材を買うときに、警備兵などの話を聞かせてくれた人のいい商人に、少しだけカマを掛けてみたのだ。
ここで商売するにはどうしたらいいのか、と……
案の定、太守に、ではなく、商館とその商人の名前が出てきた。
通常の街では、その管理も太守が行っているはずである。
(やはり、この街は自由都市の様相がある。商人の力を甘く見てはいけない……)
何しろ商人――その発展系の極地である企業は、世界を動かす力すらあるのだ。
俺が所属していた特殊組織アーカム……その媒体もアーカム財団の豊富な資金力の恩恵があればこそ。
まだ食料での物々交換の時代ではあるが、金銭自体は既に存在している。
その価値は、北や洛陽ではそれほどではなくも、こういう交易都市では莫大な力となりやすい。
そしてこれほどの交易都市が、首都である洛陽周辺ですら噂にならないほどの情報統制力……これは侮れない。
だからこそ、急がねばならない。
俺はともかく、華佗がマークされる前に。
「……よくわからんが、お前が言うぐらいだ。急いだほうがいいんだな?」
「ああ。出来れば明日にでも梁州……いや、漢中の桃香のところに向かって欲しい」
「ふむ……わかった!」
パン、と膝を叩いて立ち上がる華佗。
「お前の頼みだ。喜んで聞こう。明日のうちに連絡員と話をつけ次第、漢中へいく。それでいいか?」
「ああ、助か
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