崑崙の章
第11話 「お土産?」
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あの放浪の医師か。大陸中を駆け回っては人を救いたがる数奇者じゃったな」
「はい。漢中の南西には本山の鶴鳴山もありますし、この街にも常駐するものが居りますれば」
「ふむ……まあ、気にしないでもよかろう。ただの医師じゃ。してもう一人は?」
「それが……どうやら『天の御遣い』のようで」
「なんじゃと……!?」
「あの噂の天の御遣いだと?」
「荒唐無稽な噂では、龍神だの魔人だのと言われているそうですが……」
「噂はともかく、やつが梁州の劉備を刺史にしたのは間違いがない」
「洛陽の情報ですと、董卓と繋がっているようですな」
「西涼や袁術軍の孫策とも繋がっている報告もある」
「……要注意人物が、この巴郡にくるとは」
「一体どういう意図だ……?」
「わかりません。ただ、城の手の者の話では、市場を駆け回って交易商人から珍しいものを買いそろえ、見たこともない食事を作ったとの事」
「見たこともない食事? なんじゃそれは?」
「わかりません。ただ、素晴らしく香ばしい匂いがしていたとのことです」
「ふむ……どういう意図があるかわからんな。しかし到着してすぐ市場を……我らの存在に気付いたのか?」
「さすがにそれはないかと。聞く話では、厳顔の危機を救った誼で来訪したとのことです」
「ううむ……どう対処するべきか」
「……今は動くな」
「御大!?」
「至急、やつに関する情報を集めさせよ。人となり、能力、弱点、なんでもよい。その上で有益であれば取り込めばよい」
「害があれば……」
「……………………」
「……は。承知いたしました」
「皆も良いな?」
「「「「御意」」」」
―― 盾二 side ――
時刻は既に深夜。
秋が徐々に深まる中、鈴虫の声が静かな夜に響いている。
俺は、割り当てられた部屋のテーブルで茶を入れて来訪者を待っていた。
扉から来訪者の声がする。
俺は、扉を開けて、その来訪者を招きいれた。
「華佗、遅くに呼び出してすまんな」
「気にするな。こちらもカレーのことで聞きたいことがあったのでな」
華佗は気さくな態度で部屋に入ってくる。
俺は彼を椅子へと勧めて、茶を入れた。
「カレーについては、あとでそれぞれの香辛料の効能と作り方を書いたものを渡すよ。実はちょっと頼みたいことがあってな」
「頼みたいこと?」
華佗が、茶をすすりながら訝しげな目を向ける。
「ああ……華佗は、この街に連絡員と話をする為、と言っていたな?」
「ああ、それが?」
「それは大事な用件か?」
「いや? 定期連絡みたいなものだ。もう知っているかもしれんが、総本山はここより北西にある鶴鳴山だ。ここまでくれば、お前の兄貴の現状が聞けると思ったからだが?
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