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嘘つき
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子、月村依都子が立っていた。

「え?」

「この学校はね少し完全下校時間が早いの、だからもう部活動してないよ」

 あ、まずい、その言葉は…まるで、私が”転校生みたい”に聞こえちゃう。

「ぁぁ、そうだよね、あたしったらうっかり忘れ…」

「へぇ、そうか君が転校生だったんだ。まさか真っ先に会うとはね、僕はついてる」

 遅かった。
 彼は、気付いた。
 あたしが、杵島一美であることに。

「…水瀬さん、その人だぁれ?」

 ………ん?あぁ!そっか今はあたし、水瀬なんだった。
 これは、いけるかも。

「さぁ、あたしは知らない人だよ月村さん」 
「え?水瀬、水瀬って…君は杵島じゃ…それに月村?月村って」
 彼は困惑したように呟いた。そして何故か月村さんの名前も何か知っているみたい。
「杵島…誰ですかそれは?」
 月村さんは自分に聞かれたと勘違いしたのか峰岸大樹に答える。もちろん彼女はあたしの旧姓を知らない。
 そして彼の注意が月村さんに向いた。

 今だ!

 あたしは、二人を残し、校舎へと続く道へ走り出した。

「…………っぱぁ!!」

 何とか気付かれずに校舎内にたどり着き、止めていた息を一気に吐き出す。振り返って見るとどうやら追ってくる気配は無いみたい。
 助かった…思わず置き去りにしちゃったけど、月村さんは大丈夫かな?いや、彼はあたしを探しているんだし、彼女に何かすることはない…と思う。

 とりあえず今は早く水瀬君に会わなきゃ。

 あたしはそう思って歩き…出せなかった。
 そういえばあたしこの学校まだ全部周ってない。
 体育館とか移動教室等の場所は大体案内されたけど図書室は何処か分からない。
「聞くしかないか」
 そして、朝振りの職員室へ向かう、今度は桜先生が居た。なんでか少し辛そうだけれど
「何だ水瀬?もう下校時刻だぞ、こんな遅くまで部活見学していたのか?」
「えっと、はい…その…今からちょっと図書室に用があって…」
 桜先生は見た目がガッチリしているから一対一で向かい合うと何か緊張する。

「図書室?もう閉まってるぞ、さっき月村が鍵を閉めていたからな」

 え?閉まってる?
「あの、水瀬君は…図書室にいなかったんですか!?」
「あ?水瀬は三、四十分前に下校しているのを職員室から見たが………」


 なに………それ………


「いいから、早く下校しろよ、水瀬とは明日になっても席が隣なんだから」
 何か変な勘違いをしながら桜先生は職員用トイレに入っていった。
 なんてどうでもいい。
 三、四十分前って電話した時にはもう学校に水瀬君は…居なかった?
「何で……どうしてこんな時に嘘なんてつくの?」
 タイミング悪すぎだよ………
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