第四十六話
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第四十六話 一歩
華奈子は前に出ようにも中々前に出られなかった、それで美奈子と一緒に重苦しい空気の中にあった。
だが、だった。ここでだった。
中々前に一歩、雅美に向けて踏み出せない華奈子の背中を後ろから誰かが押した、それはほんの小さな一押しだった。
しかしその一押しでだ、華奈子は前に出た。
一歩踏み出した、するとだった。
そのまま前に出ていった、後はもう自然に足を進められた。
そして雅美のすぐ目の前に来た、二人は十センチもない間隔で顔を見合わせた。
先に声を出したのは華奈子だった、華奈子は戸惑いながらも雅美に対して言った。
「あの、先輩」
「え、ええ」
雅美も戸惑っていた、だが何とか応えた。
「何?」
「よかったら」
心の中で何とか言葉を選んでいた、そのうえで。
華奈子は普段見せない慎重さで以てだった、雅美に対してこう言ったのだった。
「ジュースどうですか?」
「ジュース?」
「はい、あたしが今飲んでいる葡萄ジュースとても美味しいですから」
だからだというのだ。
「一緒に飲みませんか」
「そうね、それじゃあね」
雅美も言葉を選びながら華奈子に応える。
「頂戴、葡萄ジュース」
「はい、それじゃあ」
雅美は華奈子からジュースを受け取ろうとした、だがだった。
ここで気付いた、華奈子の手にはジュースはなかった。テーブルの上に置いたきりになっていた。
そのことに気付いたのは美奈子だった、美奈子はふと気付いてそのうえで華奈子に背中からこう言った。
「華奈子、ジュースここだから」
「えっ、そこなの」
「ええ、これよね」
華奈子が先程置いたジュースを手に取って差し出して言う。
「はい、これね」
「有り難う、それじゃあ」
美奈子からそのジュースを受け取ってだ、それからだった。
そのジュースを手にしてあらためて雅美のところに来た、その時に葡萄ジュースのパックも持って来た。そうしてだった。
雅美の空いているコップ先程まで林檎ジュースを飲んでいたそこに葡萄ジュースを入れた、そのうえであらためて言った。
「どうぞ」
「ええ、それじゃあね」
「凄く美味しいですから」
こう言って進める、そしてだった。
そのジュースを飲んでだ、雅美は華奈子に笑顔で言った。
「本当にね」
「美味しいですよね」
「ええ、貴女の言った通りね」
「じゃあもっと飲まれますか?」
「それじゃあね」
こうやり取りをして飲む、そして。
雅美はおかわりを頼み加奈子も応える、勿論華奈子も飲んでいく。
二人で一緒にジュースを飲んだことがはじまりになった、華奈子は雅美と話をはじめたのだった、小さな一押しを受けてから。
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