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ファイアーエムブレム〜ユグドラル動乱時代に転生〜【外伝】
とある騎士の昔語り---その2---
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たこと、それに小規模領主の子弟の出である彼は直営地の賦役に就かされた農民達とのやりとりから生活の実情を知っており、無理強いした結果による生産性の低さを身を以て知っていたこともある。
 これが駐在する兵などおらず、開拓地は開拓者自身が守らねばならぬということであったならば、彼らは率先して有事に備えていたであろう、しかし、中央から派遣された騎士とその兵隊が在しているのだから荒ごとは任せてしまおうと、多少なりとも無責任な心もちであったのは否めない。
 ある意味なれあいとも言えるこの関係であったが、山賊なりその手の武装集団が現れるでもなく、なんら問題が起こりもせず同じような日々を単調に繰り返して行くのみだった。
 そんな退屈な毎日がいつまでも続き、任期を全うすることが出来ていたのならば、彼は近衛騎士の身分を喪うことも無かったのだが……





 幾つもの季節が巡り、あと一年余りで任期が切れようかというある日に事件は起こった。
 一週間ほど前に近隣のブリエンヌ伯爵が催した鹿追いの際に、獲物を追う余りこの開拓村と境を接する山へと勢子達が無断で入り込んでしまい、それを巡視中に見つけてしまうという出来事があったのだが、それを無かったことにして欲しいと使者が訪れたのだ。
 このいくつかの開拓村をはじめとしたアグスティ王家直轄地と領域の近い領主達とは川や山などの自然を目印に境界としており、このような事が起こらぬ限りは互いに立ち入らない不文律となっていた。
 折悪く、前日に山菜採りへと森に入った村人が今日になっても戻らないので捜索して欲しいと陳情が届いており、それへの対処を優先しなければならない時にそれである。
 今日も異常無しで日報を書き終えたい代官はその申し出を受け入れることに前向きであったが、ヴォルツは記録すべきであるとして軽く言い合いになってしまい、結局は責任者である代官の顔を立て、受け入れた。
 それというのも行方不明者の捜索への指揮を執らねばならないということに気持ちが向かっており、侵犯問題に関してはそもそも自分では無く代官が方針を決定し、自分はそれを執行する立場にあるのだと突き放した見方をしていたせいでもある。
 ……この時、村人を救わねばならないという気持ちよりもむしろ、赴任以来はじめて大勢の部下を指揮するという事態に心が躍るくらいの気持ちに彼は至っていた。
 各村に兵を伝令として送り、そのまま名主や村長のもとに宿泊させ、翌日の早朝から捜索活動を行うので送った兵の指示に従うようにと書状をしたためる。
 兵達には各村の男手、特に猟師や樵などを間違いなく協力させるようにと命令を与え、装備を整えさせると送り出し、それに加え行方不明者を出した村に対して、救助後の遭難者をはじめ捜索隊への食事の用意、そして捜索が一日で済まなかった場合に備え
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