第73話
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「なんだよ、その魔術儀式は?」
上条は競技会場の裏門の近くまで来ると、足を止めて裏門の様子を窺う。
正門には入場待ちの行列が出来ていたので正面突破は不可能と考えたからだ。
「「触れる」ことだよ。
特に「手で触れる」事に加わる意味には強いにゃー。
魔術を扱える魔術師ならオリアナの「速記原典」に触れても弾き返せる。
だが、何の魔術の知識もなければ、耐性のない一般生徒がその「速記原典」に触れればどうなると思う?
はっきり言って、症状はステイルよりもずっと強くなる。」
「で、でも、ステイルを攻撃したヤツってそもそも魔術を妨害する術式なんだろ?
魔術師でもない一般人とか能力者に反応するもんなのか?」
何とか呼吸を落ち着かせながら上条は土御門に聞く。
「厳密に言うなら、反応するのは「魔術の準備をした」人間の「生命力に対して」だから、一般人でも十分に危ないぜい。
魔力を練られるかどうかは関係ないし、魔術の知識技術のあるなしも、おそらく関係ないにゃー。」
最悪だ、と上条は思う。
あの校庭の、どこかに地雷が埋めてあるようなものだ。
だれがその地雷を踏むかどうかは決まった訳ではない。
だが、あそこで、たくさんの人間が何も知らずに競技を始めてしまう。
それも、校庭全部を使う玉入れだ。
当たりを引く確率は格段に高い。
「カミやん、犠牲が出る前に迎撃術式を片付けるぞ。
カメラの前で魔術現象を起こすのはまずい・・・・何より、一般人に傷をつけたくない。」
そう告げて、通話を切る。
上条は携帯電話をポケットに突っ込むと、裏門の様子を窺う。
学校の敷地を区切る金網のフェンスがあってそれを乗り越えて侵入する事も出来るが、それをすると無人偵察ヘリに見つかってしまう。
当然ながら、裏門にも警備員もいる。
このままの格好で裏門に行っても追い返されるだけだ。
競技開始まで五分前後。
他の出口を探している余裕はない。
どうしたものかと、上条が考えていると、裏門から一人、スポーツドリンクがたくさん入ったクーラーボックスを抱えて裏門から、敷地内へ入って行った。
その人物とは運営委員の吹寄制理だった。
「うそ!?」
上条は慌てて近くの自動販売機の裏に隠れる。
制理はクーラーボックスの抱えたまま、裏門の少し奥でピタリと止まると、こちらを振り返って、しかし首をひねりながら校庭へ消えて行った。
「や、やばそうだ。
土御門のヤツ、競技中に潜るとかっつってたけど、アイツが運営委員としての審判の仕事とか始めたら、一発でバレそうだぞ。
くそ、やっぱ土台んトコから計画に無理があるんじゃねーのか?」
「なーにが無理そうなんだにゃー?」
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