七章 『氷の学び舎』
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エヴァンジェリンの転移魔法によって、小太郎達は彼女のログハウスへ帰ってきていた。約二ヶ月とはいえ、想像を超える冒険の連続だった彼らには、想像以上に懐かしく感じるはずだった。しかし、平和な麻帆良学園へ帰ってきたことによる安堵と実感を得ることは出来なかった。麻帆良学園に到着して、皆が発した言葉はほぼ同じ。
「寒ッ!」
辺りは一面の銀世界になっていた。雪が深く降り積もり、今も空からは白い結晶が降り続いている。ログハウスも雪景色の一つとなっており、大きく長いつららがいくつも出来ていた。
(なんやこの臭い)
鼻をスンスンとすすりながら、小太郎は眉をひそめる。原因は分からない上に非常に微かではあるが、異臭を感じ取ったようだ。
「うひゃー、スゴイね」
小太郎が感じ取った異臭に気付いていないのか、裕奈は驚きとともに足元の雪へ手を延ばす。彼女の手に冷たい感触が伝わり、体温によって融けだした雪が掌を濡らした。それだけで、これが本物の雪であることを彼女に実感させた。
「やっぱ本物の雪じゃん! てことは、もうこっちは冬!?」
「いいや、こっちは8月31日だ」
エヴァンジェリンの言うとおり、今は8月の末である。たとえ季節外れの雪だとしても、このような豪雪にはならないはずである。
「それにこの雪、普通の雪ではないな」
辺りを一瞥して、エヴァンジェリンが断言した。
「確かに普通の雪やないな。僅かやけど魔力の気配があるで」
手に掬った雪をしげしげと観察していた小太郎が、エヴァンジェリンの言葉に同意する。
「? コタロー君、つまりそれってどういうこと?」
それが何を意味するのか、いまいちピンとこなかった夏美が小太郎へ質問する。他のメンバーも夏美と同様のようで、小太郎へ視線が集中する。
「季節的におかしい雪に、魔力の気配。それにあの姉ちゃんが言っとった事を考えたら答えは一つや」
ザジ曰く、麻帆良学園の一部は既に悪魔の手に落ちているという。それを踏まえた上で導き出される答え。それは、悪魔がこの雪を降らせているということだ。
「でも、どうして雪なんか降らしてるんだろ?」
アキラがさらに浮かんできた疑問を口にした。その必然性が分からない、といった感じだ。
「流石にそこまではわからんなー。あんたなら何か分かるんとちゃうか?」
誰に向かって口を聞いているんだ? と小太郎に言いつつ、エヴァンジェリンはそれに答えた。
「大方、住みやすい環境に作り変えているんだろうな。人間が住みやすいように街を作るのとさして変わらんよ」
エヴァンジェリンの言葉が本当なら、もはや悪魔による制圧の段階は佳境を迎え、悪魔の支配が始まろうとしているという事になる。
「
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