七章 『氷の学び舎』
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「アルの奴がまだ着ていないが、丁度いい時間潰しになるだろう。とりあえず行くとするか」
アルが到着するのを待つよりも、世界樹を確保するべきだとエヴァンジェリンは判断した。事態は刻一刻と悪化していくからだ。この雪も、人間界の魔界化の単なる序章に過ぎない。更なる混沌へと堕ちていくのは時間の問題である。
※
エヴァンジェリンからの頼みで魔法世界に留まったアルは、近右衛門やザジ達と共に進軍を続ける悪魔達を迎え討っていた。
相も変わらず、悪魔は続々と魔法世界へなだれ込んでくる。それだけではない。上空には巨魔『リヴァイアサン』がいる。百鬼夜行の如く魑魅魍魎が跋扈する光景は、もはや魔界のモノだ。
詠春やゲーデル、タカミチといった手練でなければ、この防衛線は少なくとも更に後退していたことだろう。だが悪魔は、次から次へと湧いて出てきている。さすがの彼らも優勢とは言えない。
「応援はまだ着きそうにないのか?」
本来は相反し合うはずの『気』と『魔力』を融合させ強大な力を得る『咸卦法』。それにより強化された無音拳を繰り出しながら、タカミチはゲーデルへ問いかけた。
「旧世界出身の者で構成した部隊が『造物主の掟』持ちの魔族を掃討している所のようだ。あと十分もあれば到着するだろう」
逆手に持った太刀を、爬虫類のような鱗と鋭利な爪を持つ下級悪魔『ブレイド』の頭骨に突き刺したゲーデルが答える。ブレイドは少しの痙攣を見せたかと思うと四肢は力なく緩急し、絶命した。
「もっとも、どれほどあてになるかは分からないがな」
太刀を引き抜いたかと思えば順手に持ち替え、一文字に薙ぐ。そこへ丁度『ヘル=スロース』が空間移動によって現れた。ヘル=スロースは鎌をすでに振りかぶっており、ゲーデルの命を刈り取らんと迫る。
辺りに甲高い音が響いた。次の瞬間、ヘル=スロースの体は鎌ごと真っ二つに斬り裂かれていた。
「それにしても、ザジ君がいて助かった。アレまで相手にしないといけなかったら、流石に守りきれなかったかもしれないよ」
タカミチは上空を見上げてそう言った。ザジがリヴァイアサンの相手を引き受けたことで、ゲーデル達はその他多数の悪魔に集中して戦えている。もしザジがいなければ、物量で侵略してくる悪魔を足止めすることすら難しかったかもしれない。
「ああ、そうだな」
口では同意したものの、ゲーデルの目には疑念の色が色濃く浮かんでいる。
(解せない。彼女の行動は魔帝への敵対そのもの。魔族の彼女に利はないはず……)
ゲーデルは、魔界、人間界、魔法世界という三つの世界。魔帝と造物主。ダンテの存在。その他の様々な要素を繋げていく。
しかしそれらはあくまでも断片的なものだ。大まかな背景が見えてく
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