七章 『氷の学び舎』
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それを千雨がなだめる。もっとも千雨にとっては、戦闘の内容よりも、悪魔を撃退できたことそれ自体のほうが重要だった。
「で、なんで小太郎を焚き付けるようにしたんだ?」
千雨が小声で、エヴァンジェリンへ問いかけた。小太郎を煽るようにけしかけたのには、なにか理由があると感じ取っていたようだ。
エヴァンジェリンとしては、小太郎の実力がどれ程のものになったのか見たかったのが本音だ。
弟子であるネギの実力は、間近で見たわけではないが、驚異的に伸びていた。一方で、小太郎の実力は全く垣間見ていない。小太郎は彼女の弟子ではないし、本来ならどうでもいい。しかし、世界の命運を左右する戦いに際して、その実力は把握しておきたかったようだ。
もっとも、結論を出すのは早急だ。今の一戦が全力ではない事は、エヴァンジェリンも百も承知だ。だが今の戦いだけでも分かったことがある。戦いの基礎ができていたことだ。
魔法世界へ旅立った時など、自己流の色が強く、粗が多かった。それが今では、自己流ではない、確立された戦闘の基礎を叩き込まれ、戦いが洗練された様子が見て取れた。
「……面倒だっただけだ。他意はない」
しかし、それは言わないようにした。エヴァンジェリンに小太郎を褒める義理も無ければ、その気も無いからだ。それに、たとえ千雨へ小声で言ったとしても、狗神の血を引く小太郎には全て筒抜けになってしまうというのもある。
とは言え初撃で一体目を撃破出来なかったことには変わりない。決定力に欠けている、とエヴァンジェリンは評していた。
「オイ御主人」
不意に誰かを呼ぶ声が聞こえてきた。辺りを見回しても、声の主らしい人影は見当たらない。
「ドコ見テンダヨ。ボケドモ」
その声は、木の上からのものだった。
「なんだ、チャチャゼロ」
チャチャゼロと呼ばれた小さな人形は、腰掛けていた木の枝から降り立った。
「ケケ、コッチニ戻ッテキタ御主人二オシエテヤロウトオモッテナ」
「何をだ?」
エヴァンジェリンが話を促す。
「ココガコンナニナッタ原因ニツイテダヨ」
チャチャゼロ曰く。エヴァンジェリン達が魔法世界へと発った後、複数の高位にあたる悪魔が襲来したらしい。魔法先生達も応戦したが、一般生徒の避難と護衛を優先し、現在も防戦を強いられているようだ。そのため、麻帆良学園を氷雪地帯へと変えた悪魔を撃退できないらしい。
「世界樹前広場二イル奴ガアヤシラシイゼ」
魔法先生達が動くことが出来ないのなら、現在、悪魔を撃退できるのはエヴァンジェリン達しかいない。それにエヴァンジェリン達は、もともも世界樹を目指している。そのため世界樹の付近にその悪魔がいるのならば、戦うことになる可能性が高いということになる。
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