戦いの前
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「シノン?」
「リン!」
言われた通り一番奥の洞穴に入ると同時にシノンが抱きついてきた
「大丈夫?怪我はない?」
極限状態にも関わらず笑ってしまう。ガンゲイル・オンラインに限らず、VRMMOでは多少の衝撃は入るが怪我をすることはあり得ない
「本気で心配してたんだから笑わないで」
冷静になったからか自分が言ったことがちょっとズレていることに気が付いたのだろう、顔を赤くする
なんというか、上目遣いは反則だと思う
状況が状況だけになにも言わないが
「それで……どうなったの?」
「シノンを逃がした後、ザザ……ステルベンとレオンと交戦したが……即席とはいえかなりの連携と剣技に翻弄されて勝てなかったよ。最終的に飛んできたスタングレネードがなければ撤退も危うかった」
首筋に最初に配布された注射器を模した回復キットの先を当てて反対側を押す
一つで三分の一回復するらしいから一つで十分か
「スタングレネード……一体誰が」
「ペイルライダーだと思う。彼以外の可能性は相当低い」
他の可能性は俺ら以外にも死銃の正体を知っているやつがやったってことぐらいだが……それはまずない
「そっか……」
そのシノンの言葉を最後に会話が途絶える
しばらく洞穴に沈黙が走る。響くのは風の音と時計が針を刻む音のみ
シノンを腕に抱きながら洞穴の土壁を見つめていたのは何分ぐらい経ったのか
「リン……今度は私も戦う」
「そうか」
俺はそれを拒否したりはしない。なぜならシノンの瞳に確固たる決意の光が宿っているから
本音を言うなればシノンにはこの洞穴内で待っていて欲しい
あちらにはシノンのトラウマをフラッシュバックさせるであろう黒星も存在する
シノンに自身の傷をえぐるような真似はして欲しくはないし、そもそも命がかかっている
だが、俺一人でザザとレオンの二人をほふれるかと聞かれれば、できないと答えるしかないだろう
キリトとかなら主人公補正などを発揮して纏めて粉砕しそうなものだが……
「全く……俺には主人公の資質はないな」
思わず苦笑してしまう
それでも腕の中の存在は守ると誓ったんだが
「資質なんて関係ない」
なんの気なしに呟いたその一言をシノンが否定してくる
「リンは立派な私の主人公(ヒーロー)だよ」
シノンを見ると柔らかく微笑んでいた
その笑顔を見ていると先ほどまで感じていた不安も色褪せて消えていった
「そうか……」
自然と口角が上がってしまう。先ほどの笑みとはまた違う意味の笑みが俺の顔に浮かぶ
「……そうだな」
いつもしてきたことを忘れていたみたいだ。俺の仕事は主人公を導く道を作ること
女主人公(ヒロイン)に道を開いてあげる
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