第三話 岸本恵
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「俺と同じ名前……」
じっと加藤の顔を見続ける岸本。やはり黒野は望みが薄いようだ。
そこで改めて俺がズボンを脱いでいる理由を思い出した。すっとズボンを岸本の前に差し出す。
「これはいてきな」
「え? でも……」
「ほら、俺これ(スーツ)着てるし。着てないと恥ずかしいでしょ?」
尚も断り続ける岸本。どうやら根はかなりいい子みたいだ。
「ほら、着てきたほうがいいぜ?」
「……うん」
加藤の一言で問題が片付いた。完全になつかれてしまったようだ。
「ふん。俺にはワンちゃんがいるもんね」
「何してんだよ……」
足元にいたワンちゃんを撫で回す。あまり毛並みは良くなかったが何か癒してくれるものがそこにはあった。
「まさるん」
着替える為に家と家の隙間に消えていった岸本をあごでさす。加藤は頷き、後をついていった。
「あ、俺も……」
「黒ちゃんはやめときぃ」
がしっと首の所のスーツを掴む。なにやらすごい力が出た気がするが、気のせいだろうか?
「何すんだよ」
「黒ちゃんこそ何するつもりだ?」
「え? 加藤は覗きにいったんじゃないのか?」
「……」
「……」
気持ちはわかるけどもとりあえずますます黒野を行かせるわけにはいかなくなってしまった。
「ジョセフィーヌ二号!」
「ワン!」
「ネーミングセンス皆無か!」
ジョセフィーヌ二号ことワンちゃんが黒野の前に立ちふさがる。ついでに加藤にも黒野が行ったら止めておけといっておく。
「まったく、そんなことばっかしてるともてなくなるぜ?」
「……もうやんねぇよ」
もう行く気がないようなので、ジョセフィーヌ二号を呼び寄せる。
「なんでジョセフィーヌ? なんで二号?」
「んー、なんかぴんときた」
「そいつオスだろ……」
「あ、そっか」
俺の目には長いため息をついた黒野が目に入った。
「お、終わったようだな」
少し遠くから歩いてくる男女二人。
「完全にできてるやん」
「……」
黒野は黙ってうつむいた。
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