幕間
Trick-03_だから 今は私に甘えなさい
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「院長さん、これで全部運び終わりました」
僕は両親が死んでから孤児院に預けられた。
家にあった荷物は役所の人がまとめて段ボールに入れてくれた。
それが届いたので、孤児院で割り振られた僕の部屋に運び終わったところだ。
その報告は院長室に入って伝えた。院長は70歳ほどのおじいちゃん。
「・・・・ああ、ごくろうさま。私も手伝いたかったんだが」
「大丈夫ですよ。院長さんも御歳ですし、自分のことは自分でできますから」
「・・・・そうか」
「それでは失礼します」
僕は院長室から出て行った。
院長さんが終始、悲しい気持ちを必死で隠したような顔をしていた。
まぁしかたない。孤児院にくるということは両親がいないということだ。
しかも僕は途中からこの院に来た。つまり両親が死んだことを意味している。
両親が死んだことに同情して悲しい気持ちに院長はなっているのだろう。
僕の方は大丈夫だ。両親が死んで何も思わなかったわけではないけど、
今を頑張って生きようと思う。
「美雪、ご飯の時間だから食堂に来てってさ」
「・・・」
美雪も同じく両親を亡くした。ここに来てからもずっとしゃがみこんで
なにも言わず反応せずにいた。
僕は美雪の手を取って無理矢理立たせる。
「ほら、行こう」
「・・・・」
やっぱり何も言わなかったが、そのまま手を引いて食堂に連れて行った。
そんなこんなで2週間ほどが過ぎた。
孤児院にいるみんなは優しくしてくれたので、すぐに仲良くなった。
美雪も2週間もたてば少しは落ち着いたみたいで、少しは僕としゃべるようになった。
しかし人見知りスキルを発動したせいで他の人とはあまり話さない。
いつも僕の隣にいるけど、誰かがいるときはずっと黙っていた。
この孤児院には、大人になるまでお世話になるだろうから
色々なことに協力したいと思って、
院長や面倒を見てくれる院内の先生の手伝いを率先してやった。
荷物を運んだり、僕よりも小さな子供の面倒を見たり。
小学校も孤児院の近くの新しい学校に行くことになった。
うん、これから一生懸命生きていかないといけないよね。
「信乃、ちょっと来て」
ある日、僕は美雪に連れて行かれた。といっても僕の部屋に。
孤児院の部屋は6人で1部屋を使う。僕と同じ部屋の人は偶然にも誰もいなかった。
美雪は僕が部屋に入ると入り口のカギを閉めて部屋の中央に座る。
僕も美雪の正面に座った。
「どうした?」
「信乃、泣かないの?」
心配そうに美雪は聞いてきたが、聞いた本人が泣きそうな顔をしている。
「大丈夫だよ。
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