幕間
Trick-03_だから 今は私に甘えなさい
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今はそんな暇はないって」
「暇とかそんな話をしてるんじゃない。信乃はお父さん達が死んだ事から目を
背けている、そんな風にしか見えない」
「・・・何言ってんだ?」
「目を背けている」
それいじょうなにもいうな
「お父さんが死んだのは悲しいよ。でも、信乃が泣いたのは一度も見たことがない。
公園で死んだ猫のために泣いてくれる信乃がお父さんのために泣かないなんて
ありえない」
いうなやめろ
「葬式のときだって、信乃は黙っていただけ。泣くのも悲しい顔もしなかった。
ただの無表情。感情を押し込め過ぎて何も出てなかった」
おれのからをとるなはぐなおれはだいじょうぶなんだだいじょうぶにきまっている
「ここに来てからも信乃はいつも通りを“演じていた”。
お父さんが死んでもう2週間たった。私も落ち着いた。
だから信乃は無理をしないでいいんだよ」
……ゃ…………ぃ………っ……………
「信乃は悲しくないの? 泣かないの?」
「泣きたいよ! 泣きたいに決まってんだろ!!
けどそんな風に泣いていたら父上たちは心配して成仏しないし美雪だって僕が
支えないといけないしこれから孤児院で頑張らないといけないし僕は色々やらないと
行けないことがあるからそんな暇はないから泣くの「もういい」 ・・・」
「もういいから。そんなに気を張らなくていいから」
美雪が抱き寄せるように僕の背中に手を伸ばした。
温かい。本当に温かい。僕が閉じ込めていた気持ちを、思いを融かすように・・・
「信乃は頑張った。私が2週間でこう言えるようになったのも信乃のおかげ。
だから 今は私に甘えなさい」
気付いたら僕は泣いていた。声を殺して泣いていたつもりだけど
溢れだした感情が止まらなくていつの間にか大声で泣いていた。
僕も美雪の背中に手を伸ばして抱きしめた。今では唯一の家族を手放さないために。
「あれ? そういえば私も最近泣いていなかったからかな・・・グスッ」
美雪の瞳から涙がこぼれ始めた。いや、こぼれたというよりも流れたという方がいい。
涙は止まる気配はない。次々と下に流れていく。
「ごめ、ん・・・わたしもいっしょに泣く」
この後2人して大声で泣き叫んだ。
偶然にもその日は僕の九歳の、玖歳の誕生日だった。
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
後で知ったことだが、孤児院の部屋は全て防音仕様になっている。
ここにきた子供は大声で泣くのが当たり前だからだ。
防音のおかげで僕たちの大泣きはだれにも聞こえなかったらしい。
よかった。かなりのマジ泣きだったから聞こえていた
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