暁 〜小説投稿サイト〜
宝石物語╋煌めく白と黒のコントラスト╋
第1章
第1話 とどのつまり
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が悪い。けれど呪詛を放っておく訳にもいかないので祓うくらいはしておこう。私は席を立つと、カウンターの戸棚へと向かい、そこから指で摘まむ程度の小石を二つ取り出した。それをまたテーブルへと運び、今度は別の戸棚から鋏を取り出す。さらに鋏で自分の髪の毛を切り、小石二つに巻き付けた。

「『言霊足りずとも力あれ、命(みこと)無き想いを祓え。闇なる想いに心を染めて、果たして撃は届からずや』」

私の口から出た言霊は、空気に反響するように辺りの景色を振動させ、机に置いた小石に光を集めた。光が強くなるにつれて巻き付けた髪の毛は蒸発していき、光が収まる頃には、灰色だった小石が橙色に変色していた。適当に並べた言葉でさえ浄化の言霊となってしまう自分の才能がこの頃怖くなってきたな………本職は戦闘なのに………。

再び机に転がった小石を、私はビアージに手渡した。

「お話を聞いた限りで大体のことは把握しました。なのでお守り代わりにこれをお渡しします」
「この石は………?」
「先ほど貴方は心当たりがない、と仰いましたが……そんなはずありません。あれは完璧に呪詛、何か恨まれるようなことがあったはずです。事が小さかれ大きかれ。ですからその石を、一つは肌身離さず持っていて下さい。もう一つは心当たりのある人物・場所などに置いて来て下さい。そうすればひとまずは落ち着きます」
「…ひ、ひとまず?」
「そのあいだに私が浄化を行いますので」
「は、はぁ……」
「ではまた後日、連絡させて頂きます。お代はそのときに」
「わ、わかりました……」

ビアージは石を大切そうに小包みに入れ、渋々といった感じで店を出て行った。

「リ〜〜〜マッ!」
「うわっ!」

店の扉が閉まると同時に、奥から出てきたラウが飛び付いてきた。あいにくと私の身長は162センチなので支えるのも一苦労だ。とりあえず鳩尾(みぞおち)を肘でどつきながら叫んだ。

「重い離れろそして縮め!」
「最後のは関係ねぇよな!?」

床にうずくまりながら悶えるラウを横目に、私はため息をこぼした。

「まぁた、めんどくさい依頼が来たもんだな……」
「あの小石、《呪詛反射付与》の魔法をかけましたよね?いいんですか?」

ティーカップを片付けながらナフサが問いかけてきた。というかあいつ紅茶飲まなかったな。毒なんざ入ってないのに。

「良いんだよぉ。あいつが強盗なんかするから呪われるんだ」
「あぁ。やっぱりガムラザル通りの強盗事件の犯人って彼なんだ」

やはり情報収集に長けているアズリが真っ先に反応した。そう、ビアージはガムラザル通りで起きた宝石館強盗事件の犯人なのだ。館の主は店に飾られていた剣で斬殺されていた。さらに異国の物だと思われる高価なジュエリーが全て姿を消していた。この事件が起き
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