第1章
第1話 とどのつまり
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口を噤(つぐ)み、店の奥へと引っ込んだ。私も新聞を置きながら立ち上がり、相手を向かいの椅子へと促す。
「ようこそ、宝石店《ミストラル》へ」
「……あ、えと、どうも」
店に入ってきたのは20代後半といった男性だった。
「商品をお求めでしょうか?………それとも《ご依頼》で?」
「…!………依頼、です」
「分かりました。とりあえずお座りください」
依頼、となると噂を聞いてやって来た初心者だろう。これは一から説明しなければなるまい。相手方が座り、私も腰を下ろしたところでナフサがお茶を出してくれた。二人分の紅茶が乗ったお盆を抱え、ティーカップを机に置くとすぐさま奥へ戻って行った。
「依頼のことはごく少数の情報屋しか知らないので、貴方にはこれからお話しなければならないことがあるのですが、お時間は大丈夫ですか?」
「はい。……そうなると聞かされていたので予定は空けてきました」
「ちなみにどの情報屋をご利用になりました?」
「えーと、……確か《リーフレット》と名乗る少女に……」
「なるほど」
くっそあのガキか。こりゃ紹介料取られるな……。
「ではまず自己紹介から。私は第16代《戦闘精霊浄化師》リルマムリラ・フィネローザクトと申します。主に悪霊と化した石に宿る精霊たちを戦闘によって浄化・還元することを業(ぎょう)としています。貴方の名前も伺っても?」
もはや慣れてしまった台詞をゆったりと並べ、乾いた微笑みを客に向けた。男は少しドギマギしつつも口を開いた。
「ガムラザル通りで宝石屋をやっています。ビアージ・オルガムと言います」
ガムラザル通りと言えばここからそう遠くはない商店街のことだ。月に一度、朝市などが開かれ旅商人も多いので賑やかさで言えばここら一帯で最上位だろう。宝石屋、という単語にいささか引っかかりはしたが、それは頭の隅に追いやり一つ頷いておいた。
「依頼とは、石関連で何かあったのでしょう?」
「はい……。実は、数ヶ月ほど前から身の回りで変なことが起き始めて……」
「具代的に」
「店番をやっているとき、視線を感じて振り返るんですけど、当然誰も居なくて、並べられた宝石が……まるで監視するみたいに妖しく輝きながらこっちを見てるんです。見てるって言ってもそう感じるだけなんですけど………」
男は他にも怪奇らしいことをつらつらと挙げていった。
やれ、誰も居ないはずの店から声がする。
やれ、店の商品の配置が変わっている。
やれ、これは呪いだー(棒)。
最後のは私の捏造だ。気にするな。
と、まぁ明らかに宝石を使った《呪詛》です。ありがとうございました。
「ちなみに心当たりは?」
「ある訳ないでしょう……!」
「デスヨネー」
私の推理(笑)が正しければ完全にビアージ
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