第39話 ゲームは一日一時間って言うけど、実際守ってる奴って居ないよね?
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三文にはなるだろうが!】
映像の中で父が部屋の隅に溜まっていた大量のマッチを指差す。そのどれもがスナックやキャバクラで貰えるような安っぽいマッチばかりであった。
【そんなぁ、こんなの絶対に売れないよぉ】
【じゃかぁしぃ! とにかく売って来い! 売れるまで家には絶対に入れないからなぁ!】
大量のマッチと共に少女を家の外へと蹴り出すDVな父。少女は涙を強引に拭いながらも散らばったマッチを拾い集め、そして一人、夜の町へとマッチを売りに歩くのであった。
そして、それを最期に映像は終わり、テレビの電源も消え去る。
用が済むとそのブラウン管テレビを少女は蹴り倒す。蹴られたブラウン管は地面に倒れこみ、黒い煙を上げてその命を散らす。
「以上が、私がこうしてマッチを打っている経緯だったんです」
「そ、そうだったんですね。その幼さでそんな苦労をしてたなんて……」
影響されてかキャスターもまた涙を流していた。何時の間にかお涙頂戴な展開にスイッチしていた。
「このマッチを売らないと、私は家に帰る事が出来ないんです。そしたら、此処に人がいっぱい居て、もしかしたら売れるかなって思って……」
再び悲壮感を漂わせる少女。その少女の雰囲気に影響されてしまう客が更に数を増して行く。
そんな中、少女はその場に蹲りだす。
「はぁ、疲れた……それにお腹も空いたし……でも、一箱も売れてないから帰れない」
仕舞いには其処で泣き崩れてしまう。空腹と疲労でもう一歩も歩く事もできなくなってしまったようだ。
そんな少女を見て回りもどよめきだす。
「夜は寒いなぁ……そうだ、マッチで温まろう」
少女はそう言い、売り物のマッチを一本付けてみた。小さな火が灯り少女の体を温めてくれた。
するとどうたろうか。小さな火の向こうには温かな電気ストーブが姿を現したのだ。
そのストーブが見えているのは不思議と少女だけじゃない。何故か回りに居るオタク達は勿論、目の前に居るキャスターにもそれが見えていたのだ。
だが、マッチの寿命は短い物。すぐに消えてしまい、また電気ストーブもその姿を消してしまった。
少女は名残惜しさを感じたのかもう一本マッチを擦った。するとどうだろうか。
今度は温かそうに湯気を上げている鍋が見えた。具材から見てすきやきの類だろう。
鍋を彩るは豆腐、ネギ、白滝、人参、きのこ、そして肉。
それらがとても美味しそうに鍋を彩っているのが見えた。不思議とそれを見ていたオタク達も涎を垂らしてしまう。が、やはりマッチが消えてしまえば鍋もまた姿を消してしまった。
「な、何だろう……凄い、せつねぇ」
「お、俺……何だか涙が止まらなくなっちまったよぉ」
回りではあちこちで涙を流しまくるオタク達が続
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