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タンホイザー
第二幕その一
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「・・・・・・はい」
 エリザベートの言葉を受けて遂に立ち上がった。エリザベートはその彼に熱い目を向けつつ静かに彼に対して問うのであった。
「よくぞ戻って来られました」
「はい」
「今まで何処に」
 そして今問うた。
「何処におられたのですか。貴方は」
「遠い国へ」
 エリザベートを見て答える。その声は決して虚ろなものではなかった。
「遠い国にいました」
「遠い国にですか」
「ですが昨日と今日の間には深い忘却の霧があります」
 謎の言葉であった。誰にとっても。
「全ての重いでは遠い彼方となり今一つのことを思い出さずにはいられません」
「それは」
「私が貴女に会いたいという希望を捨てていたこと」
 エリザベートを見て語る。

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