崑崙の章
第10話 「ああ、また柱が!?」
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(今回の援軍は、酷く疲れたわい……一気に十年ぐらい歳をとった気分じゃ)
それほどわしにとって、今回の出兵は驚くことばかりじゃった。
紫苑が夷陵の太守を辞めていたこと。
盾二という生意気で強引な癖に、どこか憎めない才気溢れる男のこと。
そして……沈弥のこと。
(許してくれ、とはいわぬ。わしは、”この街から”焔耶を守る為にお主を切り捨てた。わしはお主に想って貰える様な女ではないのじゃ………………)
わしは一生、やつのことを忘れぬ。
それしかできん。それしか……
(愚かな女と笑ってくれぃ、蔑んでくれぃ……お主にはその権利がある、だから……だから泰山府君の元で待っておれ。いつかお主に詫びにいく)
目を閉じ、ただひたすらに黙考する。
と――
ドンドンドンドン!
「!?」
ふいに扉が叩かれる。
いや、叩くというより――
どがしゃぁ!
「………………」
「………………」
思わず唖然とする。
そこにいたのは……『バカ』じゃった。
「あ、あー……す、すいません、桔梗さま。また、やっちゃいました……」
「こ、この……バカモンがぁーーーーっ!」
思わず寝台の枕を『バカ』に投げつけた。
「一体いつになったら貴様は力加減を覚えるんじゃ、焔耶!」
「あたっ! す、すいません、桔梗さま!」
その『バカ』――焔耶は、枕を額に受けつつ頭を下げる。
その姿は、女というより胸のある男というような姿だった。
ようやく女らしさが出始めた体つきはしているが、鍛錬に次ぐ鍛錬で引き締まった身体にうっすらと筋肉が見てとれる。
「まったく……おちおち落ち込んでもおられんのか」
「すいま――は? ええと……?」
「なんでもないわ、たわけっ! 修理代は、またお主の俸給から天引きじゃからな!」
「ひ、ひぃっ!? 桔梗さま、お許しください! 今月も豆しか食べられないのは嫌ですぅ!」
「貴様、いったいどれだけ物を壊しておるんじゃ!?」
わしの言葉に、指折り数えながらなにやらブツブツ言い出す焔耶。
その言葉は「柱」だの「荷車」だの、物騒な内容が羅列しておる。
「お主……わしがいない間に何をした?」
「え? あ、いえ……その。た、鍛錬中に……」
「鍛錬中に?」
「……あ、誤って、蔵を一つ……」
「壊したのか!?」
「……………………………………はぃ」
思わず、くらっと眩暈がした。
く、くくくくくく、蔵じゃと?
鍛錬中にどうやったら蔵を一つ壊せるというのじゃ!?
「す、すすすすすすすすすすすすいません! ごめんなさい! 許してください、桔梗さまぁ!」
がばっ、と縋りつくように平伏する焔耶。
こ、この、こ
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