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真・恋姫無双 矛盾の真実 最強の矛と無敵の盾
崑崙の章
第10話 「ああ、また柱が!?」
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?」
「大秦……秦……? もしかして、ローマか?」
「そうじゃ、羅馬(ローマ)。そこの城の作りにあわせてわざわざ内城の周囲に塁を作り、門を作ったそうじゃ。わしに言わせれば、無駄以外の何物でもないがの」
「まあ、防御力は多少あるだろうが……そもそも外城に入れないことを主とするのに、内城たる場所だけこんなことをしたら、民の反感招かないか?」
「だからこそ、先代は人心が離れて罷免されたのよ。ここには力を持つ商人も多い。洛陽への影響力のある者もな」

 そう言って自嘲気味に笑う厳顔。
 盾二がその様子に、ぽりぽりと頬を掻いた。

(力のある商人に罷免された……? つまり変な内部干渉をしないような……無頼の人物が商人達によって選別され、賄賂にて厳顔が指名された、ということか?)

 それはつまり、厳顔が政治的には無能だと商人達に思われていることになる。
 ということは、太守というのは名目であり、実質的支配者とは洛陽に賄賂をばら撒き、内部を取り仕切るのは商人たちだということ。
 つまり厳顔……桔梗たち官吏は彼ら商人にとって、よく言えば本社から出張してきた店長。
 悪く言えば……用心棒か警備隊長に過ぎないということでもある。

(これだけ発展した都市ともなれば、コロコロ代わる官吏より、そこに根付く商人のほうが発言力も影響力も強いということか。日本の戦国期にあった堺のような自由港湾都市みたいなものかもしれない)

 そう考えれば、桔梗の立場の危うさもわかる。
 商人達の機嫌を損ねた政策を打ち出せば、すぐにも罷免。
 場合によっては馬正……馬元義のように無実の罪をでっち上げられて処断されかねないということ。
 それが洛陽への影響力を持つ、ということなのだから。

(桔梗は事あるごとに自分が馬鹿だと言っていた。それはこの状況を察しているからこそ、政治が苦手な自分が太守という不相応な立場にいることに、桔梗自身がどこか周囲に引け目を感じている為か……まてよ? そんな立場の桔梗だったら? もしかして、沈弥を放逐した本当の理由って)

 そこまで考えた盾二は、愕然としながら……ふいに(かぶり)を振った。
 そう……その仮定はすでに意味を成さない。
 彼はもう……死んだのだから。

(……口には出せないよな。そんな雇われ太守のような状況で、その才覚ゆえに商人に疎まれるであろう沈弥を後継者にしたら、彼も桔梗もその周囲もどうなるか……なんて)

 門をくぐり、門兵に慰労の言葉を掛ける桔梗の姿を見つつ。
 盾二は悲しい溜息をついた。




  ―― 厳顔 side ――




 ふう……
 わしはようやく戻ってきた自室で、疲れ果てたような溜息をつく。
 荷物を投げ出し、寝台の布団に倒れこんだ。


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