崑崙の章
第10話 「ああ、また柱が!?」
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―― other side 巴郡 ――
「開門! かいもーーーーん!」
廷内にある城門が、厳顔の声と共に開かれてゆく。
ここ巴郡は、周辺の街や都と少々趣が違った作りの都だった。
中国後漢の時代の街や都は、城壁にて居住区を覆い、農地はその外側に作られる。
いわば城塞都市である。(中国では城市という)
それゆえ、街の人間の殆どが城壁……城牆の内側に住み、人口が密集した状態のため、街の内部は常に過密状態になりやすい。
労働力や募兵が容易な反面、居住区の門戸は限られており、それを越える人口を増やすことがなかなか出来ないという欠点があった。
とはいえ、治安も現代に比べれば酷く悪い。
殺人、強盗の類は日常的に蔓延り、飢饉や疫病で人は蟻の如く死んでいく。
それゆえ人口は極端な増加をすることはなく、増加したとしても流浪の民になるか、周辺での邑を作っての移民をするかという状況だった。
だが、この巴郡は旧来より豊かな流れの長江の恩恵を受けただけでなく、北部や西部にある肥沃な大地の恩恵を受ける田園地帯からの、豊富な食糧倉庫があった。
漢の高祖、劉邦が漢中を都とした理由もあり、その周辺である巴郡も長い歴史の中で発達してきた港湾都市だった。
それゆえ人口増加率は、他の都に比べて爆発的に増え、その城壁も三度に渡り拡張されている。
上空から見れば年輪のような城塁の跡が見て取れるほどに肥大した都の姿がそこにあった。
街の中心たる城内の周囲にも古い城壁と城門があり、さながら日本の平城のように内城が覆われている。
この時代の宮殿など支配者の住む場所を囲む城を内城といい、都市全域を囲む部分は外城と呼ばれ、 内城は城、外城は郭として、併せて城郭といわれている。
そしてその外壁こそが防御の砦であり、日本の城と比べると、それはとにかく大きく広い。ただし、高くは無い。
土塁や石壁の上に登っての打ち下ろしの弓矢や落石による防御、そこにはしごを使っての攻城戦などが展開されるのだ。
元来より湿度はあっても降雨が少ないのが、中国大陸の平原地帯の特徴である。
その為、雨による土塁の流出などはあまり考えて作られてはいないため、こうした大規模の城郭となった背景がある。
にもかかわらず、その内城を囲む城壁と城門が目の前にある。
ゆえに、大陸の数ある城郭の中でも特に珍しく、ここ巴郡の城は日本の『城』のような風体になっていた。
「……これ、桔梗の趣味?」
思わず盾二が桔梗に呟く。
それほどにこの城内は、他の都の内城とは異なっていた。
「わしではないわい。先代の太守がはるか西方からの書物を得たようでの。大秦というのは知っておるか
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