第一話 クレイジー・フォー・ユー
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ーム内衣装を着た、平たい顔の男女が元のアバターと同じところに佇んでいる。
それらは現実の顔だろうか?
自身を確認すれば良いのだが、あいにく自分では見えない。
だが、アバターの平均身長が縮んだ分、
さっきよりずいぶんと見晴らしも良くなった。
今度こそハルを、『彼女』を探す。
ヤツも現実の姿に戻っているはずだ。
やがてチュートリアルが終わる。
街のBGMであるのんきなワルツが、夜用にアレンジされて流れ始めた。
音が戻ってくる。
どこか遠くで細い悲鳴が一本上がった。
それに釣られて、プレイヤー達の、声が爆発する。
「「「「「「「ア゛ア゛ア゛アァァァァ!!!!!!!」」」」」」」
耳をつんざくほどの大音声だった。
1万人からなるプレイヤー達の、悲鳴、あるいは怒号。
周囲の感情に感染するように、俺もまた叫んでいた。
「ハル―――!!!!」
広場は恐慌状態となっていた。
暴動といってもよいくらいの騒ぎようだが、
団結して、打ち倒すべき敵ははるか上層にいる。
各人が、それぞれの仕方でいっぱいいっぱいだった。
彼女の名前を呼びながら、俺もまた広場を闇雲に駆け回る。
街の外に出られるようになっていると気づいたのはしばらく経ってからだった。
広場を覆っていたシールドが解除されている。
怒りも悲しみも、瞬発力はあるが長く続かない。
噴水の周りにいた人々は、やがてその数をゆっくりだが確実に減らし、
バラバラに散っていった。
静まり返った広場に、ときおりすすり泣くような声が聴こえる。
ハルはここにはいない。待っていても戻ってこない。
「合流・・しないと」
ようやくベンチから腰を上げる。
探すアテはないが、ひとまず動こう。
広場の北に、人が集まっているところがあった。
いくつかのグループに分かれて、暗い面持ちで何かを話している。
ふらり、とそちらに向かって歩を進める。
暗くて遠くからはわからなかったが、どうやらそこは真っ黒な建物の前だったようだ。
中に立ち入る。薄青い灯りに照らされたそこは、異様な雰囲気に包まれていた。
前方に巨大な鉄壁がそびえている。
のっぺりとしたそれに近づくと、何やら文字が刻まれていた。
「名簿・・?」
左はアルファベットのAから。
無意識に視線を右のほうへなぞる。
頭がずきずきする。
まんなかより少し手前に差し掛かったところで、目を留めた。
視線がある一点にくぎ付けになる。
HAL モミジの月23日 18時25分 高所落下
彼女の名前に、真っ直ぐな線が引いてあった。
意味がわからなかった。
震える足で後ずさりする。
そのまま黒鉄宮をでると、そばの路地に駆け込んだ。
「げええええええええ!!」
そこでえずいた
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