第一話 クレイジー・フォー・ユー
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がおかしい。
昼間にログインした頃は、ここにいたプレイヤーたちは皆、これからの期待に沸き立っていた。
今は、どうやらそれとは違う理由で浮き足立っている。
「・・・・・で」
「――――!―だ!」
「―――。」
広場のあちこちで、数人が固まってヒソヒソと話している。
SAOは感情の表現が大げさになる傾向がある。どの顔も暗い。
なかには怒っていると見られる者もいる。
「ハルを――」
探すべく、広場を離れようとしたその時だった。
突如、鐘の音が鳴り響いた。
大きな音。体の内側と共鳴するように、空気を揺らす。
とっさに時計を見た。半端な時刻。
なにかのイベントの前触れだろうか?
音が鳴り止まぬうちに、視界が暗転した。
次に目をあけた時、俺はもとの位置から100メートルほど移動した所にいた。
どうやら瞬間移動したらしい。
「な・・」
辺りを見回すと、光に包まれて無数のプレイヤーが姿を現してきた。
広場はたちまち埋め尽くされる。
いくら広大なはじまりの街といえども、広場ひとつにこれだけの人数を集めるとただごとではない人口密度になる。
(全プレイヤーがここに集まっているのか?)
そうこうしているうちに光が落ち着いた。
よどんでいた空気が、はっきり悪態の形をとって人々の口から漏れ始める。
(なんだ?何が始まる?)
混乱のさなか、俺はハルの姿を探そうとする。
人、人、人で周囲が見通せない。
(広場のどこかにはいるだろう)
そう考え、俺は楽観して肩の力を抜いた。
――この時のことを、あとから何度悔やんだかわからない。
俺は大声を出して、周りの人間を突き飛ばしてでも、ハルを探し当てるべきだった。決定的な分岐点(ポイント・オブ・ノーリターン)は、ただ過ぎて行く―
暗い天蓋から血の色のスライムがしたたり落ちるように降りてきた。
スライムはやがて人の形をとり、困惑するプレイヤーをよそに、こう言ったのだ。
『プレイヤーの諸君、私の世界へようこそ』
これは・・なんだ?
何度目かになるその問いを、自身へと向ける。
「カヤバアキヒコ」と名乗ったその男が続けた言葉のいくつかを理解したとき、俺は駆け出していた。
「ハル!どこだ!!!」
人ごみを掻き分け進む。背の高いアバター達に囲まれて、やはり先は見えない。
(邪魔だ!どけ!!)言葉にはならない。心のなかで思うだけ。
押しのけ押しのけ進む。茅場が何かを言っていた。
そのとき、しゃらん、とあちこちで鈴を鳴らすような音が聴こえた。
周囲のプレイヤーが一斉に青い光に包まれる。
発光は一瞬、その後は信じられない光景が広がっていた。
すべての人々の顔が、体格が、ことごとく変化していたのだ。
SAOのゲ
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