第三十五話 座敷わらしその十
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「じゃあ次ね」
「今度は美術館ね」
「そこに行って調べよう」
「そうね」
こう話すだけだった、本当に何でもない様子だ。
それでだ、茉莉也と座敷わらしの方を見てこう言うのだった。
「じゃあ次は美術館行きます」
「そうしますね」
「本当に横浜ベイスターズみたいね」
座敷わらしは阪神のユニフォームのまま突っ込みを入れる。
「すぐに次って言うのは」
「そりゃ最初は違った、って落ち込んだけれど」
「いつもだからね」
「それも泉jは絶対にあるってわかってるし」
「回っていればね」
「高校生活は三年でしょ」
座敷わらしは極めて冷静に学生生活のタイムリミットを指摘した。
「その間に見つけたいとか思わないの?」
「いや、そのうちに見つかるでしょ」
「これまでも結構回ってるし」
「それならね」
「三年の間に見つかりそうだから」
「楽天的ね」
座敷わらしは二人の話を聞いて述べた。
「そういうところは。けれど」
「けれど?」
「けれどっていうと?」
「それでいいと思うわ」
座敷わらしは二人の楽天はよしとした、こうした前向きさはだ。
「茉莉也ちゃんは今は今日こそはって言ってるけれどね」
「そうよ、阪神だって勝ってるんじゃない」
その茉莉也が言って来た。
「今日ここはって思ってね」
「ずっと明日こそはって言ってたのにね」
座敷わらしは意気込みを見せる茉莉也の過去を指摘した。
「変わったわね」
「それ幼稚園の話でしょ」
「最近もじゃないの?」
子供の外見だが鋭い、座敷わらしは旧友に対して子供の声で大人顔負けの突っ込みを容赦なく続けていく。
「打線打たなくて負けるから」
「そ、それはね」
茉莉也もここで怯んだ。
「たまたまよ。というか今年は違うから」
「もう地獄のロードはじまってるけれど」
阪神限定の悪夢のハンデだ、もっとも最近は大阪ドームを借りるのでそれ程ではないかも知れ名ィがそれでも今もある。
「そろそろ打線湿ってくるわよ」
「だから今年に限ってはね」
「それで最終戦で巨人に負けるのね」
阪神ファンにとって伝説のトラウマが語られた。
「それかホームランが無効になるのね、八木選手の」
「いや、それは」
茉莉也はこの二つのトラウマには強張った顔になって言い返した。
「何ていうかね」
「というか茉莉也ちゃんどっちの頃も生まれてないんじゃ」
「そうだけれどね」
生前のトラウマも覚えている、それが阪神ファンだ。それで茉莉也もこのことには強張った顔で返したのである。
「よく覚えてるのよ」
「じゃあ天覧試合は」
「悲しい話ね」
茉莉也は空を見上げて言った、とはいっても今彼女の頭上にあるのは保育園の天井であり夜空ではない。
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