第三幕その五
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の天使によって。
「エリザベート、貴女は」
「もう一人の私が私を消した」
ヴェーヌスの姿が消えていく。その中で彼女の声だけが聞こえる。
「これでもう」
「天使は彼女の聖なる報い」
また声が聴こえてくる。先頭にはヘルマンがおり棺が運ばれている。そこに彼女がいた。
「天なる喜びの勝利」
「聴こえるな」
「あの声が」
騎士達がここでもまたタンホイザーに問う。
「聖なる声が」
「君の耳にも」
「聴こえる」
タンホイザーは今はっきりと言った。
「声が。天使を祝福する声が」
「清き人は聖なるかな。聖なる群れに加わりて永遠なる神の前に立てリ」
「彼女は罪人の為に泣き天の救済を請い願い」
「その罪人は救われる」
「聖なるエリザベートよ」
タンホイザーは静かに言った。
「我が為に祈ってくれ」
最後まで言うと膝をつき前から倒れた。そのまま動かなくなった。その彼を多くの者達が囲んでいく。そこにはヘルマンと騎士達もいた。
一人の巡礼がそこにいた。彼はその手に杖を持っていた。タンホイザーが先程まで持っていたあの杖だ。見れば今それに新緑の葉が生え茂っていた。
「救済は世に下された。それは夜の聖なる時に起こり主は奇蹟により自らを示し給うた」
「騎士が持っていた枯れたる杖は主が新緑で飾られた」
タンホイザーを囲む全ての者達が主と彼の救済を讃えていく。
「地獄の烙印を持つ罪人はこうして救済を新たに受ける」
「この奇蹟を通して恩恵を見出せし者の名を呼び伝えよ」
そして言われる。
「神は全ての世の上にありその憐れみは嘲りではない」
「恩寵の救済は懺悔者に与えられた。今より彼は天の平和に入る!」
ヘルマンと騎士達が跪き祈る。タンホイザーはその中央で祝福を受けている。救済を与えられた彼は今エリザベートのいる天へと向かっていたのだった。祝福を受けた世界に。
タンホイザー 完
2008・9・8
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